インフルエンザ予防接種はどこまで有効か 大人でさえ4~5割は防げないという真実

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有効率をご存じですか?(写真:Syda Productions)

少しずつ寒さが増していく季節。早くも一部でインフルエンザが流行して、学級閉鎖に追い込まれた学校もあります。「インフルエンザの予防接種を受けておきたい」「自分の子どもにも受けさせておきたい」と考えている人も少なくないでしょう。

ところで、そんなインフルエンザの予防接種で受けるワクチンの有効率はどのくらいだと思いますか?

インフルエンザワクチンの有効率は低い

「80~90%以上は効くだろう」と思われる人もいるのではないでしょうか。麻疹風疹混合(MR)ワクチンや、おたふくかぜワクチンは、それぞれ95%以上、90%以上の有効率がありますが、インフルエンザワクチンの有効率は低いのです。

文献をまとめたものでは、インフルエンザワクチンの効果は、日本では小児で25~60%と、成人で50~60%とされています。厚生労働省のホームページには、乳幼児においては、「おおむね20~50%の発病防止効果がある」とされています。また、「乳幼児の重症化予防に関する有効性を示唆する報告も散見されます」とあります。

拙著『小児科医は自分の子どもに薬を飲ませない』でも触れていますが、そもそも、インフルエンザの予防接種の効果(有効率)を調査するのは、とても難しいとされています。年により流行するウイルス株が異なり、ワクチン株の構成も異なり、地域によっても流行状況が異なるからです。

私は小児科専門医です。当院においても、毎年インフルエンザの予防接種を実施していますが、あまりやりたくはありません。なぜなら、親御さんへの説明に手間がかかるからです。インフルエンザの有効率で、親御さんが期待する数値と、実際に予想される数値にかなり開きがあるのです。これは特に、1~2歳のお子さんを連れて、初めてインフルエンザの予防接種に来た親御さんに顕著な話です。

乳児や1~2歳で、初めてインフルエンザの予防接種を受けに来るのは、今まで実際にインフルエンザにかかったことのないお子さんが大多数となります。つまり、それらのお子さんは、インフルエンザウイルスに対して、体の免疫の記憶(貯金)がほとんどありません。そのような状態で、体に外から免疫を植えつけようとしても、なかなか効果が上がらないことは想像できるでしょう。大人でさえ、有効率は50~60%なのですから、生まれて間もない、免疫の力がまだまだ未熟な赤ちゃんや2歳くらいまでのお子さんは、もっと確率が低いだろう……と考えることもできます。

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