インフルエンザ予防接種はどこまで有効か 大人でさえ4~5割は防げないという真実

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実際に、私は診察室で親御さんに対して、次のようにお話しします。「乳児の場合、発症を防ぐ効果ははっきりせず、重症化を防ぐ効果はあるかもしれないという程度です。保育園に入園されていて、ご希望が強ければ接種します」「1~2歳の場合、いろいろな調査報告がありますが、有効率はおそらく20%くらいかもしれません。平たく言えば、“効いたら、ラッキー”というくらいですよ」多くの場合、親御さんはその話を聞いて驚きます。

そして、それでもよいと納得されれば接種するようにしています。

ちなみに、インフルエンザの予防接種は任意接種です。自費診療の部類に入るため、接種しない限りは料金をいただくことができません。それでも、インフルエンザワクチンについては、「しっかり効く」「受けさえすれば安心」という間違った思い込みを持つ人が多いのです。

「先生のお子さんだったら、どうします?」

ワクチンに関する考え方は、小児科医の間でも見解が分かれています。それだけに、不安を覚えるお母さんお父さんも多いかもしれません。そこで、予防接種について話がわかりそうな医者で、特に子どもがいそうな場合に、本音を聞き出すのに有効な質問は、「先生のお子さんだったら、どうします?」です。

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医者だって人間です。わが子が大切ですし、いちばんかわいいと思っています。自分が持っている知識と経験を総動員して、一生懸命に子どものことを考え、その時点でベストと考える決断をするはずなのです。だからこそ、本音を聞き出せるでしょう。

この質問は、私が実際に親御さんに聞かれると困ってしまう質問のひとつに入ります。なぜなら、お答えするのに話が長くなりますし、保育園をなるべく休ませたくないという親の都合を含めて、接種を受けさせている部分もあるからです。

私は、大多数が「ワクチン推奨派」の小児科医の中において、どちらかと言えば慎重派であり、親の意見を聞きすぎる傾向にあります。ただ、価値観がますます多様化している中で、言われるがままではなく、わが子の予防接種をどうするかを真剣に悩んでいる親御さんの判断の助けになればと思い、本音を吐露させていただきました。

鳥海 佳代子 とりうみ小児科院長

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とりうみ かよこ / Kayoko Toriumi

島根医科大学医学部卒業後、島根医科大学医学部附属病院 小児科、津和野共存病院、東京女子医科大学母子総合医療センター、みさと健和クリニック等を経て、2010年にとりうみこどもクリニック開院。

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