アメリカの橋梁や道路は、本当に危険なのか トランプ大統領の「インフラ劣化説」を検証
だが、このままトランプ大統領などの政治家によってこの議論が歪められてしまえば、老朽化した水道管からの鉛被害や学校施設の整備など、切迫したインフラ投資ニーズ、あるいは地域経済効果の高いプロジェクトに投じるべき資金が奪われてしまうリスクが生じる。
「橋梁を改修するのも結構だが、その間に、メンテナンスを受けていない水道管が破裂して通勤経路が途絶してしまう」と語るのは、インフラ設計会社リフォーカス・パートナーズの創業者シャリーニ・バジハラ氏だ。
米国土木学会では、国内の大量輸送システムは他のインフラに比べ、質と予算措置の点で劣悪な状態にあると考えている。このロビー団体は2017年の報告書のなかで、米国のダムや堤防、上水道施設は橋梁よりもさらに悪い条件下に置かれていると評価している。
きっかけは崩壊事故
インフラ懸念が米国社会を揺るがせたのは、2007年、ミネアポリス市内のミシシッピ川を渡る州間高速35号線の橋梁がラッシュアワーに崩壊したことがきっかけだ。13人が犠牲となったこの事故を受けて、橋梁への投資拡大を求める声が高まり、その後の米国インフラに関する議論の基調となった。
だが連邦捜査官によれば、この崩壊の原因は老朽化ではなく設計上の欠陥だったという。
米国の橋梁問題の現実をよりよく反映しているのは、州間高速270号線がセントルイス郊外でフィーフィー・クリークを渡る地点だろう。
米運輸省の2017年版全国橋梁要覧をロイターが分析したところ、この橋を通過するのは1日約22万3000台で、米国で最も交通量の多い橋の1つである。この要覧は、国内の高速道路に架かる全長約約6メートル以上の橋梁61万5000カ所を網羅している。