私は息子が死んだ理由を教えてほしいだけだ

19遺族が争う大川小訴訟の控訴審を控えて

大川小だけがこのような甚大な被害に遭ってしまったのは、柏葉校長の怠慢と市教委の学校防災意識の低さによるものだということを、証人尋問により、あらためて確信しました。校長の責務を明らかに怠っていた事の一つに、引渡しのあり方が確立されず滞ったままだったことが挙げられます。柏葉校長が平成21年4月の大川小赴任時に保護者から防災用児童カードを提出してもらい、児童引渡し確認一覧表を作成しなければならないことを、前任から引き継ぎ、柏葉校長も承知していました。にもかかわらず2年間手付かずで放置されていたことは、怠慢のなにものでもありません。作業を怠ったため、結局柏葉校長が就任していた間に引渡し訓練は実施されませんでした。しかし、教育計画には防災用児童カードの運用が明記されていました。市教委は、このような大川小の杜撰な教育計画を、点検、指摘することなく、容易に見過ごしてきました。まさしく学校保健安全法の第26条による、学校の設置者である市教委の責務に反するものであります。私の義理の母は地震後、孫達の帰宅を待ちわび、自宅から一歩も外に出ることなく犠牲になりました。私が在住していた長面地区の多くの祖父母達も同様に自宅で犠牲になっています。柏葉校長が早急に引き渡しの具体的な方法を確立し、保護者への周知を徹底していれば、祖父母達は孫達の安否を気にすることなく直ちに避難し犠牲になることはありませんでした。校長として、市教委として、平時から学校防災に忠実に取り組んでさえいれば、子供達の命、祖父母達の命が奪われることはありませんでした。よって柏葉校長、市教委の責任は重大であり、地震発生前の平時における安全義務に違反するものであります。この事件は明らかに人災によるものです。

「行方不明の娘への想い」

これまでも一貫して主張して参りましたが、私が提訴に踏み切ったのは行方不明の娘への想いがあります。遺体が見つかったのと、見つからないのとでは雲泥の差があります。いまだに娘を葬ってあげられないことで、親の私もさることながら、私の父と母の心労をも増長させました。父は昨年頃から認知症の傾向が現れ始めました。ずっと張り詰めてきた気持ちが一気に切れてしまったかのようでした。これまで人前で泣くことなどなかった父が、私の前でも子供達の遺影に向かい声を上げて泣くようになりました。震災後から誰よりも気丈に振舞い、主人と私を気遣い、孫達がいなくなった悲しみを、父はずっと自分の胸に仕舞い込み耐えていたのです。子供達がいなくなって一番ショックをうけていたのは、本当は父だったのかもしれません。子供達が生きていれば、父はまだまだ元気でいたはずです。子供達の死、そして娘が行方不明であることは、私達と祖父母達の生きる力を喪失させ一生を台無しにしました。石巻市、宮城県には責任を取っていただかなくてはなりません。また、一審で認めていただけなかった、娘の捜索のために仕事を辞め、2年間働けなかったことに対しての保障も認めていただきたいと思います。遠藤純二氏が7年間も教師としての地位のまま、経済的に保障されていることを考えれば、私の経済的保障が認められてもおかしくないものと考えます。慰謝料をあらためて請求し、損害論を是非構築していただけるようお願いいたします。

村井知事が、震災当時多くの高齢者が大川小に避難し教員らがその対応に追われた、教員らの努力を否定できない。と発言したことに対し反論させていただきます。先に提出されました、震災当日子供を迎えに行った保護者のAさんの陳述書で、Aさんは、大川小の校庭に子供達と教員らと子供達の保護者が何人か居たが、近所のお年寄りはいなかった。さらに、何人かの教員らは校庭にいる子供達の回りに立っていて、石坂教頭がボードのような物を持ち、迎えに来た保護者の確認をしていた。と言っています。すなわち、大川小に地域の人達が押し寄せることも無く、指揮を執らなければならなかった校長代理の教頭が、自ら引渡しを勤め、さらに他の教員らも子供達の周りに立っていました。よって教員らは地域住民の対応に追われてはおらず、さらに避難を検討する余裕もあったことがわかります。このような教員らの行動の、一体どこに努力を感じるのでしょうか。知事は不確かな情報をあたかも真実のように公言し、教員らをかばう振りをして世論を味方につけ、教育行政の責任を免れようとしています。また、震災から1年後の2012年3月11日、知事が大川小を訪れた際のことです。知事は私にこう言いました。三角地帯の方を向いて「こっちじゃないよなぁ」と言うと、今度は裏山の方を向いて「こっちだったよなぁ」と。つまり、教員らが子供達を避難させるのは、三角地帯ではなく、裏山だった。三角地帯への移動は判断ミスだったということを言ったのです。知事自身も十分わかっていたのです。そうであるならば専決処分で控訴を決めるのではなく、二度とこのような事件が繰り返されないように、首長として、県、国ぐるみで学校防災を見直し、私達の声に耳を傾け、改善に取り組むべきだったのではないでしょうか。大川小の事件をなおざりにし、やり過ごそうとしている宮城県の対応に強い不信感を抱きます。

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