パナソニックが「肉の丸焼き機」を出せたワケ 始めは「コレはないわ」、それでも製品化した
しかし、強烈なインパクトを残したこのアイデアは、捨てられることはなかった。
日本国内で白モノ家電のメインターゲットは共働き世帯だ。比較的収入が高く、こだわりも強い。気に入ってもらえれば、高付加価値商品にも手を伸ばしてくれる。洗濯機や冷蔵庫の国内平均単価が右肩上がりであることが、それを証明している。
足りなかった「感情訴求型」の商品
共働き世帯向けの家電には2タイプある。時間のない平日に家事を効率化する機能訴求型の商品。買いだめに適した大容量冷蔵庫、まとめ洗い・乾燥をこなす洗濯機、ロボット掃除機などで国内家電の王者、パナソニックが得意とするのはこちらだ。
もう一つが、日々の生活をちょっとぜいたくにしたり、休日に家族や友人と過ごす特別な時間を演出する、いわば感情訴求型の商品だ。調理家電では、油を使わないノンフライヤーや高級トースターなどで他社がヒットを飛ばしており、「パナソニックとしても新しい何かを出せないかと考えていた」(石毛氏)。
“塊肉を回しながら焼く機械”は、「新しい何か」になりうるのではないか。これをなんとか実現できないか――商品企画チームは走り出した。
最初に行ったのが“回すこと”の必然性の検証だった。見た目の派手さのためだけに回すのであれば、そんな商品が成功するはずがない。だが、回しながらゆっくり焼いていくと確かに肉はおいしく調理できた。ただし、回転して肉を焼くだけの家電ならマニア向けで終わってしまう。
ビジネスとして成り立たせるには、日常的に使ってもらえる商品に仕上げる必要があった。
回転して焼く「グリル」はもちろん、「オーブン」「燻製」「トースター」の4つの機能を高い次元で成り立たせること。これが正式な商品化への大きなハードルとなった。
実はとりわけ難しかったのがトースター機能だという。なぜか。
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