パナソニックが「肉の丸焼き機」を出せたワケ 始めは「コレはないわ」、それでも製品化した

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

もちろん販売価格で5万円程度に押さえ込むのは容易でなかった。これまでになかった商品であるため、ほかの商品との共通部品はほとんどない。大半の部品で専用の金型を作る必要があったからだ。

「コスト面の工夫は企業秘密」と松田部長は多くを語らないが、部品材料や構造の見直しなど可能なかぎりコスト削減の努力をした。金型費用も含めた開発費は生産台数で割るため、コスト削減にも販売台数がカギとなる。販売に自信を持てたことが商品化に踏み切れた大きな理由だ。

創業100周年記念の波に乗る

2018年3月に創業100周年に迎えるパナソニック。昨年8月からアプライアンス社でも100周年記念の販促キャンペーンを開始している。

100周年にふさわしい特徴ある家電を打ち出すという全社的な空気感があったことに加え、パナソニックの家電全体を取り上げるCMが作られるなど、ボリュームゾーンではないロティサリーグリルのような商品にも脚光が当りやすいという追い風もあった。

アプライアンス社の松田昇・調理商品部長(左)と石毛伸吾氏

商品のデキの良さが前提にあったことは間違いない。本間哲朗アプライアンス社社長(パナソニック専務執行役員)も参加した社内説明会でも「調理して試食してもらうと、ほとんど全員がOKを出した」(松田部長)。

ここまで販売は好調だが、目新しさに飛びつく層が一巡した後、売れ続けるかどうかはまだわからない。「投資回収ができないと事業としてはダメ。そのためにはいまの好調な販売を継続しないといけない」(松田部長)。石毛氏は「ロティサリーだけでなく、4機能の充実を伝えていくことで長く売っていく」と力を込める。いずれにしろ、勝負はこれからだ。

「商品企画に携わるようになって以降、むしろ新しいモノを求められてきた」と石毛氏は証言する。調理家電では、1987年に発売したホームベーカリーなど、パナソニックが先鞭をつけた商品もある。最近なら2015年9月に発売した魚焼き機に燻製機能を付けた「スモーク&ロースターけむらん亭」といったユニークな商品もある。

パナソニックの家電は面白い。そう当たり前のように言われる日が来るかもしれない。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事