閑古鳥の住宅展示場で一体何が起きているか 敷居の高さを改善しないとますますさびれる

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このため住宅事業者、中でも大手ハウスメーカーはこの10年ほど、都市中心部での住宅供給に積極的に取り組んでいる。多くは3階建て、4階建てだが、中には9階建てまでにも対応する事業者も現れている。

住宅街である都市の周辺部と郊外から、繁華街へと住宅事業者のターゲットが広がったこと、つまり顧客が変わってきたことが、住宅展示場とモデルハウスの新設ニーズを生み出しているのだ。そのしわ寄せは既存の住宅展示場に現れている。

住宅事業者は一方でモデルハウスの数を集約し、住宅展示場の区画に空きができる「歯抜け」状況が顕著になっているのだ。象徴的なのが、横浜市西区にある「tvkハウジングプラザ横浜」。かつては約100棟ものモデルハウスを擁していたが、今はモデルハウスの数は50棟程度となっている。

たとえば、有力ハウスメーカーの1つ、積水ハウスはかつてここに10棟ほどのモデルハウスを設けていたが、現在は3棟にまで集約化している。このような効率化の動きは他の住宅事業者にもまんべんなく広がり、ここだけでなく全国的に住宅展示場の空き区画が発生している。

「敷居の高さ」も原因に

筆者は昨年の12月中旬、さいたま市内にある住宅展示場に足を運んでみた。JR「さいたま新都心駅」から歩いて5~6分の大変利便性の良い場所にあるが、土曜日の午後にもかかわらず、「お客さん」とおぼしき人はあまり見られなかった。寒風吹きすさぶ中、モデルハウスの前でスタッフが手持ちぶさたの様子が印象的だった。

筆者はその日、画像素材を求めて訪れたのだが、「お客様、ぜひ、建物の中もご覧になってください」という彼らの切実な呼びかけを受けた。その様子に恐縮してしまい、その後に所用があったこともあり、短時間で住宅展示場から退散することになってしまった。

住宅展示場を訪れたことがある方なら、筆者と似たような体験をしたことがあるだろう。そこで感じるのは、「敷居の高さ」に違いない。「住宅展示場に行くと、営業担当者からしつこく迫られそうで気が重くなる」などという消費者の声もよく耳にする。

この敷居の高さを改善することが、住宅展示場の活性化にとって何より必要だと、筆者は常々思っている。ちなみに、モデルハウスにいるスタッフなどの関係者に聞くと、「住宅建築を予定されていない方の来場も大歓迎!」というから、気軽に訪れても大丈夫だ。

あらかじめその旨を伝えておけば、モデルハウスのスタッフも「ホットなお客じゃないんだ」とわかり、必要以上に干渉されず気軽に見学できるはず。連絡先としてメールアドレスを伝えることもお勧めだ。

たとえば、部屋の模様替えの参考にしたいなどという、インテリアに興味がある方は足を運んでみるといいだろう。モデルハウスはその事例の宝庫だから、そんな人にはきっと訪れてみる価値があるはずだ。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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