閑古鳥の住宅展示場で一体何が起きているか 敷居の高さを改善しないとますますさびれる

拡大
縮小

1つ目は新築住宅需要の縮小だ。住宅需要の目安となる新設住宅着工は、ピーク時に160万~170万戸の高水準で推移したが、2016年には約97万戸にまで縮減している。

ただし、これには集合住宅や賃貸住宅が含まれ、実際には住宅展示場がメインターゲットとする「持家」(注文住宅)の動向を見たほうがいいだろう。その持家は、全体よりも減少の度合いが大きい。1996年に新設着工は60万戸を超えていたが、2016年には半減以下の同29万戸強となっている。つまり、それだけ住宅展示場へのニーズが減っている。

情報取得の変化

もう1つの理由として、情報取得のあり方が大きく変わったことがあげられる。以前は「家を建てよう」と決意した場合、「まずは住宅展示場のモデルハウスを巡ってみよう」と考える人たちがほとんどだった。

現在はホームページをはじめとするインターネット経由による情報入手を第一に重視する消費者が増えている。お気に入りの住宅事業者や建物のデザインなど、ある程度の情報を仕入れ、絞り込んでいるわけだ。

このため、住宅展示場を訪れる際も限られたモデルハウスしか見学しなくなっている。結果的に来場頻度が減り、展示場全体としても盛り上がらないというわけだ。このほか、リフォームや中古住宅の取得など、住宅需要の大枠が変わりつつあることも要因といえる。

住宅展示場そのものは戸建て住宅需要の減少の一方で、それほど数を減らしていない。

全国にある住宅展示場の数(矢野経済研究所の調べによる)は、2016年5月時点で342カ所あるという。これはピークとなった2000年の405カ所と比べ63カ所減。増減率は約15%である。

2016年の新設住宅着工は96万7237戸、2000年は122万9843戸であり、減少率は約21%。これだけをみると、住宅展示場の数と新設住宅着工件数の減少幅に大きな差はないように感じられる。

しかし、これを持家のみでみてみよう。2016年は29万2287戸で、2000年は45万1522戸と、この間の減少率は約35%。住宅展示場の減少率15.5%とは20ポイントほどの乖離があるのだ。この差は決して小さくはない。

そのカラクリとして指摘できるのが、都市部の中心部で住宅展示場が新たにオープンしていることだ。ここ5年ほどで東京23区だけをみても、いくつかの住宅展示場が新設されている。たとえば、JR山手線内の渋谷区青山エリアにも住宅展示場ができた。

これは、三大都市圏をはじめとする大都市圏への人口集中により、郊外ではなく街中に住まいを求める人たちが増えたことによるものだ。相続税対策など、土地の有効活用ニーズが高まったことも理由の1つともいえる。

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