低下する経済成長、拡大する格差、迫り来る財政危機。トランプ米大統領や共和党議員には、税制改革によってこれら3大問題に対処するチャンスと責務があった。だが、残念なことに彼らは責務を怠り、チャンスを台なしにする法案を通過させたのだ。
米国の公的債務がすでに戦後最悪の水準にある中で、この税制改革によって財政赤字は今後10年間でさらに1.5兆〜2.2兆ドル(約165兆〜242兆円)悪化する。所得と富の不平等が急拡大している中で、減税額の8割が1%の超富裕層に回ると推定されている。
成長率の押し上げ効果はかぎられている
しかも、経済が8年以上にわたって緩やかに拡大を続け、労働市場が完全雇用に近づいている中では、減税が持つ景気浮揚効果はわずかなものにとどまるだろう。
確かに、大規模な法人減税は長年の懸案だった。投資は喚起され、国内外の企業が米国で事業を行う動機も強まるだろう。しかし、成長率の押し上げ効果は、トランプ氏や同氏の経済ブレーンが喧伝する「年率1%ポイント以上」を大幅に下回ると、圧倒的多数のエコノミストが予測している。
経済成長に伴うトリクルダウン(富者が富めば貧者にも富が滴り落ちるとする効果のこと)によって「平均的な世帯の年収は極めて控えめに見積もっても4000ドル(約44万円)増加する」とトランプ政権はブチ上げるが、これを裏付ける根拠は何もない。