多くの研究が示すように、法人減税の恩恵のうち賃金に回るのは20〜25%。残りは株主のものだが、その3分の1は外国人。減税で最大の恩恵を受けるのは、発行済み株式の約半分を保有するトップ1%の超富裕層となるだろう。
代替財源は経済成長によって生み出せる、とする政権側の主張を裏付ける根拠も存在しない。法案に賛成した議員の多くはわかっているが、減税によって失われる税収のうち期待される経済成長でカバーできるのは、せいぜい3分の1。だがこれは彼らの高等戦術なのだ。
減税によって税収が減れば、低所得層や中間層に恩恵をもたらす政策のカットが今後、正当化しやすくなる。すべては財政規律や福祉改革のため、というわけだ。
富裕層へのバラマキのツケを払うのは
さらに問題なのは、トランプ減税が格差を劇的に拡大し、固定するような条項を満載していることである。個人所得税の最高税率を引き下げ、遺産税(相続税)の課税最低限を2倍へ引き上げ(=課税対象者が減る)、いわゆるパススルー企業(個人事業主やパートナーシップなど米国ビジネスの95%を占め、現在は個人所得税の対象になっている)にも減税を施すもので、富裕層へのバラマキ同然となっている。このツケを払うのは中間層と将来世代だ。
この法案は実物・金融資本への投資を優先しているが、米国が真に必要としているのは人への投資や生涯学習だ。ロボットやAI(人工知能)が労働市場にもたらす破壊的な影響に対処するためである。しかし、トランプ減税は働くことを奨励するために勤労所得控除を拡大するどころか、給与所得に対して、米国史上初めて事業主所得やパートナーシップ所得よりも高い税率を課すものとなる。
大半の米国人は、トランプ減税が欠陥だらけでウソの公約まみれなのを知っている。医療保険制度改革法(いわゆるオバマケア)の撤廃に失敗した議会共和党は大型税制改革を強引に成立させ、リッチな大口献金者の歓心を買おうとしたのだ。だが、これは共和党支持者の多くの期待を裏切るものである。トランプ減税が不評であることを考えると、11月の中間選挙で何が起きるか興味深いところだ。
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