「パート妻」は年収150万円稼ぐほうが幸せだ 老後に備え「103万」「130万」の壁を破れ

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パートタイムで働く妻が社会保険に加入するメリットは、たとえば健康保険なら病気療養のため欠勤が続いたとき、これまでの社会保険未加入のパートであれば単に収入がカットされるだけでしたが、1日当たり約3000円の傷病手当金を受け取れることになります。社会保険給付が増えた分、加入している民間の医療保険の保障を小さくして、保険料を抑えることも可能です。

さらに、大きなメリットがあるのは、厚生年金です。仮に30歳のパートタイムの妻が毎月の給与12万5000円で60歳まで働けば、老齢厚生年金として年間約25万円を、国民年金の上乗せとして終身で受け取ることができます(老齢厚生年金簡易計算式:給与×5.481÷1000×厚生年金加入月数)。老齢年金は終身年金ですから、このように、将来の備えを拡充することができます。

さて、老齢基礎年金は第3号被保険者(会社員の妻)でいる間は保険料が免除となりますが、自身が社会保険に加入すると保険料を負担することになります。仮に20歳から60歳まで専業主婦でいると、保険料を一切自分で負担することなく65歳から約78万円の老齢基礎年金を受給できます。これも専業主婦優遇といわれるゆえんです。

前出のように、妻自身が厚生年金に加入するともちろん保険料は負担することになりますが、老齢基礎年金に約25万円の老齢厚生年金を加算できます。つまり、合わせると78万円+25万円=103万円の老齢年金です。また、国の年金は65歳から5年間、70歳まで受け取りを据え置くと142%になります。つまり103万円の老齢年金が146万円になるのです。妻自身が月10万円超のおカネを終身で確保できるということは、かなり重要だと思います。

iDeCo加入なら、さらにメリットがある

もちろん、iDeCoに加入することもお勧めです。先ほど年収150万円の税金負担は課税所得が26万円に対し所得税、住民税合わせて4万4000円とお伝えしました。もしiDeCoで月2万3000万円の積み立てをすれば、新たに27万6000円の所得控除を作ることができ、この計4万4000円の税金も、3400円と、4万0600円も圧縮できます。税率が変わらないことが前提ではありますが、30歳の妻がこの方法でiDeCoを30年継続すると、税のメリットだけでも約122万円ものおカネを節約しながら、自分年金が作れるのです。

妻の年収
150万円

iDeCoに加入せず

iDeCoに加入

 

所得税

住民税

所得税

住民税

-給与所得控除

65万円

65万円

65万円

65万円

-基礎控除

38万円

33万円

38万円

33万円

-iDeCo控除

 

 

27万6000円

27万6000円

課税所得

26万円

31万円

0円

3万4000円

納税額

1万3000円

3万1000円

0円

3400円

合計

4万4000円

3400円

差額(iDeCoにより税制メリット)

4万0600円

もちろん、働きに出ることだけが老後の資産形成の解ではありません。しかし、もし「もう少しパートの勤務時間を増やすことが可能な人」なら、十分検討に値するはずです。

また見方を変えると、パート従業員を多く抱えている事業主にもメリットがあるはずです。つまり、配偶者控除の拡大におけるメリットやiDeCoの加入のメリットなどを職場で説明して、一人でも多くの有能なパート従業員が働く時間を増やせば、人手不足の昨今、大いに助かるのではないでしょうか?

一見、なにかと難しく感じてしまう国の制度ですが、今年はぜひ、配偶者控除の拡大とiDeCoを組み合わせ、上手に活用したいものです(なお、上記の税計算はあくまで簡易版です。個別のケースについては、税理士などにお問い合わせください)。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

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やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

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