楽天優勝の立役者は、42歳の元外資金融マン チームを変えた、新社長の「巧みな戦略」と「熱き思い」

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優勝に続く、もうひとつの使命

強力な“助っ人”外国人が起爆剤となり、初優勝を飾った楽天イーグルス。実は、選手への総年俸は今季、昨季ともに約23億円で変わっていない。推定年俸でジョーンズに3億円、マギーに1億円+出来高の契約を結んでいるものの、活躍していなかった5人の外国人選手と昨季限りで契約を打ち切り、戦力として見込める有力選手にしかるべき報酬を払うように変えたのだ。今季のチーム総年俸は広島、DeNAに次いで少ないが、的確に補強すれば十分に戦えることを示している。

昨年8月に立花が就任したとき、求められた使命は優勝と球団経営の黒字化だった。前者は達成した一方、後者はまさに取り組んでいる最中だ。昨年はスポンサーが15社増え、観客動員数が1万7000人以上増加したにもかかわらず、約9億5000万円の営業損失を計上した。球場改修に伴う減価償却費=約9億円が大きく響いた格好だ。

今季はチームの好調が最大の要因となり、観客動員数は昨季比で1試合平均7%アップしている。チケットが完売した試合は昨季の5度から、今季は8月までに9度を数えた。勝つことでチームを魅力的にし、ファンを引き付けようというのが立花の描く黒字化への道筋だ。

「『優勝できるようにチームが強くなる』=『ファンが増え、球団の収入がアップする』のスピード感が一緒でなければ、経営的にうまくいかない。そうしたプロスポーツの永遠の課題を、乗り越えていかなければならない」

リーグ初優勝を決める1カ月前、社員たちから就任1周年記念でプレゼントされたエンジ色のネクタイを締めた立花は、クリネックススタジアム宮城でこんな話をしていた。

「自分は今までの土台にトッピングしているだけ。私がやったのは1〜2%。5年後に私の真価が問われる。まだ始まったばかりだと思う」

2013年の秋、現場の選手や監督、コーチ、裏方と勝利の美酒を味わった立花は、すでにもうひとつの使命達成に目を向けている。

(撮影:今祥雄)

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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