邦画も作るワーナー映画の神髄とは  ウィリアム・アイアトン日本法人社長に聞く

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――今回はフィルムで撮影されたのでしょうか?

ネガはコダック社さんのフィルムを使用しました。一時はハリウッドの某有名映画監督がフィルムを買い占めたなんてうわさ話もあり、李さんも心配していたんじゃないかと思いますが。でもコダックさんも先日、経営再建を完了し、これからも映画フィルムを継続して提供していただけるとのことなので、よかったと思っています。ただし、今はほとんどフィルムで上映する映画館は少なく、デジタルデータに変換しています。映画祭によってはフィルムで上映をするところもありますので、1本だけフィルムプリントを作りました。

(C)2013 Warner Entertainment Japan Inc.

本場アメリカでも公開させたい

――ヴェネツィア国際映画祭を足掛かりにということだと思うのですが、本作の世界戦略はどのようにお考えですか?

まずはヴェネツィア国際映画祭、トロント国際映画祭、釜山国際映画祭にエントリーしました。ほかの映画祭もいろいろなところからオファーが来ているので、世界でのリアクションを見ながら、今後の世界戦略を考えたいと思います。

――当然、オリジナル版が制作されたアメリカでの公開もあると思うのですが。

もちろんアメリカでのマーケットを考えなくてはいけません。たとえば5大都市でやったとして、どれくらいの売り上げが見込めるのか、どれくらいの宣伝費がかかるのかといった計算もしなくてはいけない。そういった面で本社からOKが出れば、私個人としてはぜひともやりたいですね。

われわれはゲリラ作戦でいく

――ここ数年、ワーナー エンターテイメント ジャパンが推し進めているローカル・プロダクション(邦画制作)についてお聞きしたいのですが。『藁の楯 わらのたて』『アウトレイジ ビヨンド』『るろうに剣心』『R100』、そして今回の『許されざる者』と意欲的な企画に果敢にチャレンジしている印象があります。

われわれも企画を探しに行かないといけないですからね。邦画メジャーさんならTV局や出版社とのパイプも太いですが、われわれはゲリラ作戦でいかなくてはいけない。確かに『藁の楯 わらのたて』なども最初に聞いたときはビックリしましたよ。でもだんだんとシナリオが出来上がってきて、企画の概要が見えてきたら面白いなと思えるようになりました。

――ローカル・プロダクションの企画においては、ワーナー エンターテイメント ジャパンではどこまで裁量を任されているのでしょうか?

ウィリアム・アイアトン William Ireton 1955年、アメリカ人の父親と、日本人の母親との間に生まれる。1976年上智大学卒業、ムービー・TV・マーケティングに入社。その後、1980年の東宝東和株式会社を経て、1988年にワーナー・ブラザース映画に入社し、マネージング・ディレクターを務める。2006年には、ワーナー エンターテイメント ジャパン代表取締役社長に就任。その後、製作総指揮として『最後の忠臣蔵』『豆富小僧』『パラダイス・キス』『ワイルド7』『るろうに剣心』『藁の楯 わらのたて』『許されざる者』といった作品を手掛ける。

われわれはいつも5カ年程度の計画を立てていまして、それをいつもアップデートしていっています。シナリオ作り、ストーリーボード作りに関しては、予算的にも1000万円いくかいかないかなので、その辺りに関してのハードルは高くないのですが、制作に関して言えば、ハリウッドでも行われているグリーンライト・システムという企画を精査するシステムを経ないといけません。

昔はスタジオのチーフが、映画の制作をする・しないの決定権を持っていたのですが、今は劇場だけでなく、パッケージや配信、テレビなど、あらゆるビジネスモデルがあるので、ひとりで決めることができなくなっています。企画書を出して、目標興行収入はこれくらい。それから配収・宣伝費に基づいてビデオが何本売れるか。レンタルは何回転されるか。それから最終的にテレビのセールスプライスをビジネスプランに落とし込んで、企画を実現化すべきかどうか精査していきます。もちろんテレビ局と組むとなると、ビジネスモデルが変わってきます。『藁の楯 わらのたて』がいい例ですが、テレビ局と共同幹事をさせていただくこともありますし、『るろうに剣心』のようにテレビ局なしでやろうという作品もあります。

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