さらに難しい問題は、賃金体系や昇進といった日本の雇用システムの根幹にかかわるものだ。日本企業はすでに、人材獲得競争で外資系企業に負けている。外資系企業は、日本企業よりも高い報酬を支払うことに前向きだからだ。
報道によれば、中国の通信機器大手・ファーウェイ(華為技術)の日本支社が理系の新卒大学生に対し月給40万円、修士号保有者に対しては43万円の初任給で募集をかけている。日本の大手電機メーカーのほぼ2倍の額だ。仮に、日本人の人材獲得競争で日本企業が外資系企業に負けているとしたら、海外の人材を日本に呼び寄せることなど、どうしてできるだろう?
専門家の給料も高くない
SWエキスパーツによれば、日本で働くソフトウエア開発者の年収の中央値は4万0700ドル(約460万円)で、ほかの先進17カ国より低かった(2015年時点)。これは、日本では技術者に対しスキルに応じた報酬の上乗せがほとんど行われていないことが一因になっている。日本のソフトウエア開発者の給与は、通常の従業員をわずかに7%上回る程度だ。対照的に、米国では通常の従業員に比べ4割高い報酬が開発者に支払われている。ドイツでは33%、フランスでも21%、報酬は高い。
1996年に設立され、現在5000人の従業員を抱える日本のソフトウエア企業・ワークスアプリケーションズはインドからIT人材を採用しようとしている。インドのIT人材の平均年収は5万4000ドル(約610万円)と、同国平均の9倍。同社がインドからIT技術者を呼び寄せるために提示する初任給は6万ドル(約670万円)だ。
これは日本のIT人材の初任給を大幅に上回り、業界全体の平均に匹敵する。つまり、若いインド人に支払われる給与が、年上で勤続年数も長い日本人を上回る可能性があるということだ。
報酬に差がありすぎて日本人従業員から不満が出ることになるのか。これより高い報酬を提示する非日系企業にインド人が転職しないようにするために、この金額で足りるのかどうか。こうした疑問に対する答えはまだ出ていない。
だが、年功ではなく職務内容で給与を決めることが、日本企業の慣行に反するのは確かだ。海外からの労働力受け入れは、日本に幅広い変化を迫る可能性がある。
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