一時は典型的な中道派の政治家とみられていたマクロン仏大統領だが、最近では右派とのレッテルが張られるようになっている。富裕税の廃止、雇用規制の緩和、住宅補助金のカットなど、右寄りの有権者が支持する政策を推し進めているからだ。しかし、事はそれほど単純ではない。
右派と左派の対立が根強く残っているのがフランスだ。右派は伝統的に自由を重視してきた。個人が創造力を発揮する妨げとなる障壁は打ち壊すべき、という考え方だ。一方の左派は平等であることを重視する。富の再分配を通じて公平な競争環境を創り出す政策を追い求める人たちだ。
左派はすべての政策で対立
だが、フランスは本質的に再分配の国であり、こうした国としての特質によって、現実には左右の溝はこの数十年間で大きく縮まった。一方、左右両陣営の内部では対立が深まっており、右派と左派の違いを識別するのは、以前にも増して難しくなっている。
たとえば、極右政党「国民戦線」はバラマキを批判しているが、一方では国家による富の再分配を積極的に受け入れている。こうした左翼的なスタンスには、しかしながら、移民排斥という国粋主義路線がかかわっている。再分配は“本物の”フランス人だけのものであるべき、という主張だ。
一方の左派では、事実上、すべての政策課題について根深い対立がある。いったい何をもって“左派”の政策というのか、それを見極めることすら困難なほどだ。
仏社会党は「(中道の)マクロンでも(極左の)メランションでもない」とのキャッチフレーズを掲げ、差別化を図ろうとしているが、この作戦は効果的ではない。
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