中国政府は「キリスト教弾圧」を強化している 約6000万人に急増したキリスト教徒の前途

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温州にある教会の牧師は、「温州市政府は、数があまりにも多すぎることを理由に、教会を登録制にしていない。だから家庭教会も多く、政府がこれらを管理することは困難だ」と語る。

温州での取り締まりで特に問題になっているのが、日曜学校で用いられる教科書だと教師たちは言う。政府は宗教関係の出版物を制限しており、教会では海外の教科書を翻訳して用いることが多い。

ある教師は、未認可教科書の使用をやめ、「日曜学校」という名称を避けたところ、授業が再開されたと明かした。

信教の自由

中国の法律は、公式には子どもを含めたすべての人に信教の自由を認めている。だが同時に、教育と年少者の保護に関する規則では、国家による教育を妨害するため、あるいは子どもたちに信仰を「強要」するために宗教が用いられてはならないとされている。

最西端にある新疆地域など中国国内でも不安定な地域の地方政府は、子どもが宗教行事に参列することを禁じている。だがそれ以外の地域のキリスト教徒コミュニティーが全面的な制約に直面することはめったにない。

共産党は2017年、大学の学生、国有企業の従業員、そしてお膝元の政府当局者がクリスマスを祝うことに対し、国営メディアの報道によれば「西側の宗教文化による腐敗に抵抗する」といった文言を用いた、尋常ならざる厳しい警告を発した。

温州の親たちは子どもたちの教育を自身の手で管理したいと考えているが、政府は、党に忠実な新世代の宗教指導者を生み出そうとしている。

中国の国家宗教事務局を率いる王作安局長は10月にロイターに対して文書でコメントを寄せ、愛国的な宗教指導者を求める中国の「切迫したニーズ」に応えるためには、今回政府が公布し、2月に施行される予定の宗教学校に関する新たな規則が必要だと述べている。

「宗教学校を卒業した人材が、政治的・宗教的性格の双方において水準を満たしており、国に対する愛と宗教に対する愛をうまく結合させていくことをわれわれは願っている」と王氏は言う。

だが、国際人権NGOフリーダム・ハウスでアナリストを務めるニューヨークのサラ・クック氏によれば、多くのキリスト教徒にとって、党が宗教教育を統制することを容認すれば、神よりも党を優先せざるを得なくなり、受け入れがたいと語る。

したがって、党としても信仰教育を統制することしかできていない。

「寝るときに、聖書由来の物語の読み聞かせを受ける子どもは、今後も必ずいるだろう」とクック氏は言う。

温州のChenさんは、中国の若者たちのあいだで無神論者よりも信者の方が多数になるまでは、教育で正面から信仰を扱うべきと考えている。

「次の世代では、キリスト教の信者がもっと増えるのは確実だろう」と彼女は言う。「キリスト教の信仰が伝承され、受け継がれていく力は、ますます大きくなっている」

(Christian Shepherd and Stella Qiu翻訳:エァクレーレン)

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