ラーメンがミシュランのお墨付きを得た軌跡 1つ星を獲得するまでの道のりは快挙の連続

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ところが、事態はそれだけにとどまらなかった。

2015年12月4日に発売された『ミシュランガイド東京2016』において、東京・巣鴨のラーメン専門店「Japanese Soba Noodles 蔦」が、ラーメン史上初の一つ星を獲得したのだ。「ミシュランガイド」が「蔦」のラーメンを、ラーメン部門で特においしい料理だと保証したということだ。

さらに翌年の『ミシュランガイド東京2017』では、「蔦」に続いて東京・大塚の「創作麺工房 鳴龍」が、ラーメン史上2軒目の一つ星を獲得し、現在、日本国内には2軒の一つ星ラーメン店が存在している。

誰も予想し得なかった快挙

私は、「Japanese Soba Noodles 蔦」が一つ星を獲得した2015年12月当時、ラーメン好きの知人や、仲が良いラーメン店の店主に対し、「ミシュランガイド」がラーメン専門店に☆を付けることを予想していたかどうかを尋ねてみたことがある。

結果は明白、そのような事態を想定していた者は誰もいなかった。興味深いことに、一つ星を獲得した張本人である「Japanese Soba Noodles蔦」の店主・大西祐貴氏でさえ、発表される直前まで、「『ミシュランガイド』は、コストパフォーマンスに着目した『ビブグルマン』という評価指標を設けている。この指標は、まさに価格が安いラーメンのためにあるようなもの。だから、ラーメン店に☆が付くはずがない」と考えていたという。

ましてや、ラーメンに対して、お酒を飲んだ後の締めに食べるB級グルメといった程度の認識しか抱いてこなかった大多数の日本人にとって、ラーメン専門店にミシュランの☆が付いたという事実は、驚天動地の出来事に他ならないものだった。

実際のところ、ラーメン史上初の☆付き店舗となった「蔦」に対する反響は、「ビブグルマン」カテゴリーに掲載された前年とは比較にならないほど大きいものだった。インターネットメディアはもちろん、テレビやラジオも、こぞってこの話題を採り上げた。

一介のラーメン愛好家に過ぎない私に対しても、複数のメディアから「どうして『蔦』は一つ星を獲得できたと思うか?」「『蔦』のラーメンは、☆印が付くほどおいしいのか?」といった取材があったほどだ。

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「蔦」に関しては、ワイドショーや情報番組の1コーナーにとどまらず、「蔦」だけにスポットを当てたドキュメンタリーが作られるほどの注目の浴びようだった。たとえば、2016年1月に放送された『情熱大陸』(TBS系)では、ミシュランで☆を獲得した「蔦」の人気の過熱ぶりや、新たに世界で勝負を挑むために行動する大西店主をカメラが追っている。同年3月に放送された『ドッキュ麺』(フジテレビ系)では、「蔦」の味の秘密や製造工程から、大西店主のラーメンに対する信念や哲学に至るまでが、1時間にわたって徹底的に掘り下げられた。

私が知る限り、これまで、単独のラーメン専門店や店主が、ここまでクローズアップされた例はなかった。そのような番組を作っても高視聴率が見込めないことは明らかだったからだ。ところが、ミシュランスターの前では、これまでの常識など一瞬で覆されてしまった。ラーメン専門店に☆が付いたことは、それほどまでに画期的な出来事だったのだ。

田中 一明 ラーメン官僚

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たなか かずあき / Kazuaki Tanaka

1972年生まれ、兵庫県出身。通称・ラーメン官僚。大学在学時の1995年より、ラーメンの食べ歩きを始める。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」との信条のもと、年間700杯以上を食べ続ける。現在、通算14000杯以上。新しく開店したラーメン店を次々と訪ねる、「コレクター型」の「超ラーメンフリーク」。

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