「年収900万円家族」は一歩間違えば破綻する 自分のことを「高給取り」だと思っていないか
なぜE男さんとC子さんは不自由なく、暮らせているのでしょうか。読者もうすうす感じていると思いますが、その理由を探っていくと、2つに集約されました。「社宅住まいで家賃が相当安いこと」と、「子どもがまだ6歳なので、教育費にもさほどおカネがかからない」ことが功を奏しているのです。
試算は大赤字!受け入れられないE男さんは怒り出した
では、このまま本当にマンションを買ったり、子どもを中学生から私立に行かせても大丈夫でしょうか。早速、2人の希望に基づいて、「キャッシュフロー表」を作ってみました。将来の収支を予測するために、「入り」=収入と「出」=支出を書き込んで行くというシンプルなものですが、とても重要なものです。
すると、家計はお子さんが私立中学校に進学する頃から大幅な赤字に……。たとえば私立中学に通わせたら、入学金や寄付金などでそれだけで簡単に100万円が飛んでいきます。さらに授業料は、毎月5万円以上は当たり前。ということは、中学入学時の初年度は200万円前後を覚悟しなければいけません。そこにさらに7000万円のマンションを購入するとなると……。たとえば両方の親からかなりのおカネの援助などがあれば別ですが、毎月のローンは、社宅時代の住宅費とは比べものになりません。
この結果をみたE男さんもC子さんも「信じられない……」と絶句、しばし呆然としていました。「うちのような高年収でも、高級マンションが買えず、子どもを私立に通わせられないとしたら、どこの家庭ができるんだ!」と怒られたのを覚えています。
このように、比較的高収入の人の家計に見られる傾向としては、「都心にマンション」「子どもは私立」、さらに「高級車を所有」……というように、すべてワンランク上のものを嗜好する、いわゆるブランド志向があげられます。「自分は高給取り」という意識が働き、家も教育も車も、高いものになってしまうのです。
E男さんが怒ったことが、すべてを物語っているのかもしれません。「年収が900万円もあるのだから、問題ないはずだ」という気持ちはわかります。しかし実際には「希望」をすべて実現すると、貯蓄ができない余裕のない家計になってしまいます。余裕がないくらいなら、まだましかもしれません。場合によっては、「高給取り意識」が命取りになり、赤字家計を引き起こしてしまうことも珍しくありません。E男さん一家は実行する前に相談に来たから良かったのですが、もし実行していたら、大変なことになっていたと思います。どうしてこのような認識の違いが出てくるのでしょうか。
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