イノベーションは、どうすれば生まれるか? バイオベンチャー社長、窪田良氏インタビュー(上)

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——著書の『極めるひとほどあきっぽい』では、ひとつの分野にこだわらず、いろんな分野にチャレンジすることの重要性を説いています。組織としてイノベーションを生むためには、各個人が複数の分野に精通する必要があるのでしょうか。

人間は新しいものを学び始めた時に、一番学びの速度が早く、ガーっと吸収できます。しかし、ひとつのことを学び続けると、しだいに伸びが鈍化してフラットになってしまう。そのときに、新しい分野にチャレンジをすると、また学びの速度が速まります。それを繰り返すことで、その人の価値がどんどん高まっていくのです。

学ぶ分野のコンビネーションは、それがユニークであればあるほど、その人しか持っていない発想力や実行力が身に付いていきます。「主体的にユニークなキャリアを構築したい」「長期的な視点で、組織を広く見る仕事をしたい」という人は、いくつか柱になる専門を持っていたほうが、すごく有利です。

もちろん、ひとつの専門を極めるという選択肢もあります。ただし、薬剤開発のように、前例のないことに挑む分野では、従来型のトレーニングだけを受けてきた人よりは、複数の専門性を身に付けた人のほうが、イノベーションのチャンスが大きいはずです。

——ひとつの専門を極めるのに、何年ぐらいかかるものでしょうか?

分野によりますね。たとえば、ソーシャルゲームのプログラミングだったら2~3年で十分専門家になれるかもしれませんが、医療や研究や薬剤開発というのは、すごく長い時間がかかります。患者さんの命にかかわる分野は、技術の習得に長い時間がかかりますし、それだけ実績を積まないと信用を得にくい分野です。

——どの分野を選ぶかは、偶然性による部分も大きいとは思いますが、主体性も大事ですよね。

そうですね。もちろん自分でコントロールできない部分はありますが、積極的に意志決定を行うことは重要です。「自分で選択した」という実感があったほうが、後悔が少なく、プラスに考えられます。

それに、主体的に自分の人生をデザインして、リードしていく訓練を積むことによって、周りの人を巻き込んで行く力が身に付きます。自分のことをリードできない人が、リーダーとして周りをリードするのは難しいと思います。

※ インタビュー(下)に続く

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