イノベーションは、どうすれば生まれるか? バイオベンチャー社長、窪田良氏インタビュー(上)

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バイオベンチャー企業、アキュセラ社CEOの窪田良氏。
 米国の地で、ベンチャー経営者として活躍する一人の日本人がいる。それがシアトルに本社を置くバイオベンチャー企業、Acucela社の窪田良社長兼CEOだ。
 窪田氏は、眼科専門医として勤務した後、米ワシントン大学に移り、独自の細胞培養技術を発見。2002年4月には、「失明の恐れがある患者のために安全な新薬を開発し、世界に広める」という目標を掲げ、Acucela社を立ち上げた。
 10社に1社しか残らないと言われるバイオベンチャー業界で、Acucela社はなぜビジネスを拡大し続けられているのか。イノベーションを生むために、どんな工夫をしているのか。イノベーションの極意を窪田氏に聞いた。

「戦略的ムダ」のススメ

――イノベーションを生むために、どんな工夫をしていますか。

「自分は専門外かもしれない」というような意見こそ出してほしいと言っています。たとえば技術開発をしているときに、人事担当の人間にも、「私はこの技術の専門ではないけれど、こう思う」ということを、あえて言ってもらいます。

専門外の人が言うことの多くは、時間のムダだったり、大したインパクトのない意見であることは否めません。ただ、ごくまれに光る意見がある。そのごくまれに起こるイノベーティブな発言を引き出すために、ムダな議論を許す環境をあえて作っています。

人間はどうしても先入観があるので、「この人は大学の偉い先生だから、正しいことを言うだろう」とか、「この人は専門外の人だから、トンチンカンなことを言うだろう」と思ってしまう。ひとつの専門だけでずっと育ってきている人は、知らず知らずのうちに、その専門のルールや既成概念によって思考パターンが形作られていて、そこから飛び出すのが非常に難しくなってしまう。そうした先入観を取り払うことから、アッと驚くイノベーションが起きるのです。

日本でも米国でも、大企業でイノベーションは無理

「日本の大企業でイノベーションはどうしたら起きますか」とよく相談されますが、私は「アメリカでも日本でも、大企業ではなかなかイノベーションは起きません」と答えています。というのも、組織が大きくなると、組織の細分化が進み、フロア全員がファイナンス担当やマーケティング担当になってしまいます。すると、違った専門の人と交流することがなくなってしまうのです。

われわれの会社の場合、人数がまだ80名強と少なく、ファイナンス担当者の隣にプログラムマネジメントやテクニカルディベロップメントの担当者もいるので、新しい化学反応が起きやすい。違ったバックグラウンドや専門性のある人が融合することが、イノベーションにつながる気がしています。

ちょっと矛盾する言い方ですが、効率を追求するとイノベーションは起きにくくなります。イノベーションは無駄の中から起きる。だからこそ、“戦略的なムダ”“意味あるムダ”がすごく重要になってきます。

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