50代夫婦が保険解約の前に絶対にすべきこと 「子どもにかかるおカネ」が峠を超えたら?

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一方、老齢厚生年金の支払いなどで重要になる標準報酬月額は62万円が上限です。したがって、これまでもこの額が62万円以上だった場合、この額を下回らない限り、老齢厚生年金額には変化がありません。また老齢厚生年金の計算には賞与も含まれます。ですから、55歳以降、賞与も大きく変化するような場合、年金事務所などであらかじめ今後の見込み年金額について説明を受けると良いでしょう。逆に言えば、役職定年後に発行されるねんきん定期便は、給与が減額になったことを反映して老齢厚生年金の見込み額が書かれていますから、今後はあまり変化がないと考えることもできます。いずれにしても、ねんきん定期便は非常に重要な書類ですから、きちんと確認しましょう。

生命保険継続の場合は?

前出のとおり、会社員だった夫が亡くなると、妻には夫の老齢厚生年金の4分の3が終身で支払われます。夫が亡くなった時点で、厚生年金加入期間が300カ月に満たない場合、「短期要件」といって老齢厚生年金を300カ月加入とみなして遺族厚生年金を計算するという特例があります、また会社退職後の受給は、ねんきん定期便の受給資格期間が300カ月以上であることが条件ですので、過去に未納期間が多い場合は注意が必要です。

一方、遺族年金は妻に850万円以上の継続的な年収があると認められると一切支給されなくなりますし、妻自身に老齢厚生年金があると調整されます。たとえば、妻に会社員経験がなく自身の老齢厚生年金がない場合は、夫が亡くなったことによる遺族厚生年金(夫の老齢厚生年金の4分の3)と、妻自身の老齢基礎年金を受給します。しかし妻自身が会社に勤めている(老齢厚生年金がある)場合は、まず妻の老齢厚生年金が優先され、遺族厚生年金額がそれを上回る場合にのみ、差額が老齢厚生年金に上乗せされます。したがって、妻が働いていてしっかり老齢厚生年金がある場合、夫が死亡すると夫の老齢年金はすべてストップして、妻の年金のみとなります。妻の老齢基礎年金は、調整されません。

このように、50代の保険の見直しは単純に「子どもが育ったから要らない」というわけではなく、これからの夫婦のおカネの流れを把握した上で検討する必要があるのです。「なんとなく大丈夫そう」とするのではなく、これを機会にしっかり検討されることをお勧めします。もし生命保険を継続させたいとなった場合、会社で入っていた団体生命保険が退職後も継続できるかなども確認しましょう。会社を辞めると契約を継続できないこともありますし、少し保険料が上がる場合は、「払い済み」ができるかどうかなど考えます。

さらに、生命保険には、遺族の生活保障のほかに相続対策という意味合いもあります。生命保険は受取人が指定できますし、相続税資金の手当てに有効です。また「500万円x法定相続人の数」の分の、非課税枠も使えます。あまり知識がないまま保険の解約を依頼すると、相続対策として保険を継続しませんか?などといわれてしまいますが、また別の生命保険の契約をすると亡くなるまで使えないおカネになりますので、本当に相続対策としての生命保険が「今」必要なのかどうか、じっくり考えましょう。

なお、相続税対策の生命保険はおカネの保険ですから、契約にあたって原則健康状態は問われません。また支払った保険料がほぼそのまま死亡保険金となるものが多いです。老後の生活の見込みがたち、やはり相続税対策が必要と判断されてから加入しても間に合います。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

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やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

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