「トヨタは電動化が遅れている」説にモノ申す 傾注するハイブリッド車の進化が示す真意
そもそも、なぜトヨタは「欧米勢に比べてEV化に出遅れている」という報道が独り歩きしてしまったのだろうか?
ハイブリッド車の進化はトヨタ電動化の進化と同義
それは多くの人が「EVとHVは別物」という認識を持っているからだと筆者は思う。確かにテスラモーターズの「モデルS」や、ルノー資本の日産自動車の「リーフ」、BMW「i3」など、欧米勢が量産EVの市販化を果たしているのは一般消費者にも目につく。
トヨタには世界初の量産FCV「MIRAI(ミライ)」があるが、量産EVは2012年に「eQ」を発売したものの、世界販売台数は100台にとどまった。東洋経済オンラインが「HV王者のトヨタがEVにアクセル踏み込む理由」(12月19日配信)でも指摘しているように、EVを量産した経験はないに等しい。
ただし、すべての電動化パワートレインには共通する重要な要素技術は「モーター/バッテリー/インバーター」の3つである。これにエンジンを組み合わせれば「HV」、充電機能を追加すれば「PHV」、フューエルセル(燃料電池)と水素燃料タンクを組み合わせると「FCV」、そして、そのまま使えば「EV」である。
つまり、ハイブリッド車の進化はトヨタ電動化の進化と同義である。
トヨタはこの20年のHV開発により、モーターは「出力200%アップ、サイズ50%ダウン」、バッテリーは「ウエイト30~50%ダウン、サイズ60%ダウン」、インバーターは「エネルギーロス80%ダウン、サイズ50%ダウン」と、小型/軽量/高効率化を実現している。
これこそが「最先端の電動化技術」なのだ。さらに累計1100万台のHV生産/販売の実績に裏付けられた耐久性/信頼性/商品性/コスト競争力など、大量・高品質で生産する技術を構築していることも忘れてはならない。このように、EVシフトを声高らかに歌う欧州勢の「付け焼刃」とは意味が違う。
現在、世界の電動車市場(HV/PHV/EV/FCV)は323万台(2016年)だが、そのうちトヨタは140万台でシェアは43%もある。ここに関して新聞をはじめとする一般メディアはあまり触れられていない。
一方で、現在の年140万台を13年間で同550万台まで引き上げるには、これまでと同じことをしていては達成するのは非常に難しい。これまでトヨタは「近距離用途はEV」「乗用車全般はHV・PHV」「中距離用途はFCV」と電動車の棲み分けをしていたが、寺師副社長が言うように「社外が変化しニーズは多様化しているため、従来の枠組みにとらわれずにやることが大事」と方針を転換した。
具体的には下記になる。
・EVは2020年以降、中国を皮切りに導入を加速、2020年代後半にはグローバルで10車種以上に拡大(中国に加え、日本・インド・米国・欧州にも順次導入)
・FCVは2020年代に乗用車、商用車の商品ラインナップを拡充
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