「親を殺したい」虐待された子どもたちの叫び 「クソ」「死ね」と当たり前に言う親たち
今は『189』に電話をすると、近くの児相につながるシステムが構築され、通報しやすくなっていますが、たった1人の子どもを助けることも簡単なことではありません」
例えば、「近所のどこかから子どものひどい泣き声がする」という通報があった場合、まずは子どもがどこの誰かを特定しなければいけない。それだけでも大変な作業だが、多くの親は虐待行為を否定し、「しつけだ」などと主張するため、虐待か否かを判断するのが難しい。
さらに、児相職員が虐待の加害者である親から暴力を受けるケースも決して珍しくない。身の危険を防ぐため、警察官の援助を受けざるをえない事例も相当数にのぼるという。
「私も暴力を受けたことがあります。深刻な虐待で、命の危険さえある子どもを職権で保護したのですが、“おまえらにそんな権利があるのか!”“国家による誘拐だ!”と反発する保護者との面接は9時間に及びました。その途中で暴行を受け、眼鏡も吹っ飛びました」(川崎さん)
虐待は世代連鎖する
子どもを保護したあとは、子どもの心理的なケアをし、保護者とも話し合いを続け、子どもを親元へ返せるかどうか慎重に検討していく。どうしても親が育てるのが不適切と判断された場合は、里親への委託や児童福祉施設入所などの対応も必要となる。
「児相の統計によれば、“虐待されている”と子ども本人が通報してくるのは約1パーセント。96パーセントは近所や先生など周りの人からです。言い換えれば、周りが気づいて連絡してくれなければ、虐待はエスカレートします。
中学生くらいになると、家出や非行、自殺などの行動を起こすこともあり、事態は複雑かつ深刻になります。
親はよく、“自分はもっとひどい暴力を親にふるわれたけれど、今ではこうしてきちんと仕事をしている”と言ったりしますが、よくないと思っていても実際、自分が叩かれて育つと、暴力を介さずに子どもと接する方法がわからないんです」(川崎さん)
虐待は世代連鎖する可能性も高いのだという。
田中由香里さん(仮名=45)にとって、物心ついたときから母親は怖い存在だった。些細なことでもヒステリックに怒鳴りちらし、殴られたり物を投げられたりするのは日常茶飯事だった。
ちょっと部屋を片づけなかっただけで、夜中に叩き起こされて片づけさせられたこともある。彼女が中学1年生のとき、親は離婚。その後は母の実家で祖父母と暮らしたが、母の暴力と暴言は続いた。
「“そんなこともできないのか、この役立たず。父親と同じだ”と人格否定がすごかった。お小遣いももらえなかったし、いつも否定され、拒絶されている感じでした」(田中さん)