「親を殺したい」虐待された子どもたちの叫び 「クソ」「死ね」と当たり前に言う親たち

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成長して親を憎むことがあったとしても、それをすぐ自分で否定して罪悪感に悩む。そう仕向けられ育っているのだ。

「クソ」「死ね」と日常的に言う親

「心理学に『ストックホルム症候群』というものがあります。誘拐事件や監禁事件などの被害者が犯人と長時間過ごすことで、犯人に過度の同情や好意を抱くことをいいますが、虐待された子どもも同じような心理に陥っていることが多いんです」(福島さん)

福島さんは都内でカウンセリングルームを主宰している。母親が「子どもに問題がある」と連れてくるのだが、母親に席をはずしてもらって子どもだけに話を聞くと、ふだんから「バカ、ブス」と罵倒されているケースが多いという。

「クソ、死ね、は当たり前のように言っていますね。それが言葉の暴力だと親は思っていないようです」(福島さん)

必然的に、子どもは世の中の大人を信頼できなくなる。カウンセリングをすると、「こんなに自分の気持ちをわかってくれる大人がいたなんて」と驚く子どもたちもいるそうだ。どんな家庭で育っているか、がよくわかる。

「子どもたちには、選択肢がないと思いつめず、どこかに自分を救ってくれるマシな大人がいるはず、と学校や近所で周りを見渡してみてほしい」(福島さん)

厚生労働省によれば、昨年度に対応した児童虐待件数は、過去最多の12万2578件。前年度より1万9292件増えた。虐待死は前年度比で13人増の84人だった。厚労省で同調査が始まったのは1990年。その年、1101件だったことを考えると現在は120倍となっている。

実際に虐待件数が増えているのか、虐待を通報する意識が高まったからなのか、はわからない。しかし、虐待の対応にあたる児童相談所の職員数は1000人程度しか増えていない。圧倒的な人手不足だ。

32年間、児童相談所に勤務し、現在は『子どもの虹情報研修センター』のセンター長を務める川崎二三彦さんは、児童相談所の職員たちの苦労をこう代弁する。

「“虐待かも”という通報が児相に入れば、必ず対応しなければいけません。手遅れとなって子どもに被害が及べば責任を問われ、批判にさらされます。

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