日本国民が払わされかねない林業政策のツケ 「森林環境税」や「森林バンク」は本当に必要か

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こうした現実に対して、検証や反省が行われてきた気配がない中で、本来は40年と言われるスギの伐採適齢期が過ぎ、伐採が迫りつつあるスギ林を放置できない。やむをえず、「森林環境税」の導入を契機に、伐採→再造林→伐採というサイクルを再び繰り返すための政策に着手しようとしている可能性がある。

1人1000円の「森林環境税」創設?

そんな状況の中で、ここに来てアベノミクスの規制緩和政策の一環として浮上してきたのが、前述の「林業の成長産業化」だ。この11月6日には規制改革推進会議の農林ワーキング・グループが「林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の推進のための提言」を発表している。

この提言をみるかぎり、林業の成長産業化はこれまで同様に、まったく同じパターンで全国一律の画一的な政策を繰り返そうとしているようにしか思えない。たとえば、林業の成長産業化のための財源として森林環境税の創設が提言されているが、いまのところ住民税に上乗せする形で1人1000円を徴収。住民税を支払っている6200万人が対象になる予定だ。

導入時期は、2019年10月の消費増税に配慮して2020年度以降の導入を検討。約620億円の税収になるわけだが、筆者が疑問に思っているのは、なぜ中央政府が一括で山林行政を支配していかなければならないのか、という点だ。

とりわけ、税金の徴収を国が行って、都道府県や市町村といった地方自治体が補助金としてその税金を受け取り、さまざまな事業を行うというシステムが依然として続いていることに違和感がある。「国有林があるから」という言い訳が聞こえそうだが、国有林は地方自治体の管轄から独立させて運営すればいいだけのことだ。

半世紀前、スギを全国一律に近い形で植林させたことで、日本は森林資源の4分の1を非効率なものにしてしまったという反省ができていない。規制改革推進会議の提案書には、新たな森林管理システムを生かして林業の成長化を進めるためとして、さまざまな政策を提案している。簡単にまとめると――。

➀市町村が仲介者となって森林の集積、集約化を進める
➁森林所有者責任の明確化
③市町村による森林の公的管理
④国有林事業との連携
⑤木材の利活用を過度に制限している規制・基準を見直す

この中で注目したいのは、①、②の森林所有者の森林管理の責務の明確化だ。森林管理者が不在の場合には市町村が経営、管理を受託したうえで、間伐等の公的管理もしくは林業経営体に再委託するとしている。

そもそも日本の森林所有者の管理は、戦後すぐにGHQによって実施された「農地解放」の対象にならなかったために、旧態依然としたシステムが現在も続いている。たとえば、法務局が使う森林の公図は実測と大きく異なると言われる。2500万ヘクタールある日本の森林面積のうち、地籍調査をしていない面積は1000万ヘクタール以上と言われ。地籍調査がほとんど行われていない地域も数多くある。そんな状況の中で、森林所有者の責任を明確化する、と言われても無理な話だ。

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