共働き夫婦は妻の死亡リスクを考えていない 妻に何かあったら夫は子供を抱えて働ける?

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一方、妻死亡時に遺族基礎年金を受給していた夫は、年齢にかかわらず遺族基礎年金受給期間中は遺族厚生年金を受けることができます。妻死亡時に夫が55歳未満であれば遺族厚生年金の受給権は子どもに移るので受け取りは子どもが、夫が55歳以上であれば夫が受給します。家計で考えるとどちらが受取人になっても金額は変わらず、妻が受け取るはずだった老齢厚生年金の4分の3(300カ月の最低要件も同様にあり)です。

残された夫は残された妻より年100万「収入」が少ない?

では遺族基礎年金が終了すると、国からの保障はどうなるのでしょうか? 会社員である夫が亡くなった場合、妻であれば65歳まで受給できた中高齢寡婦加算は、この場合夫には支給されず、妻なら一生涯受給できる遺族厚生年金は、子どもが子どもでなくなるとき、すなわち遺族基礎年金が終了する(子どもが19歳になる)と、終了してしまいます。これから子どもの大学費用などがかかるという時期にすべての年金がなくなってしまうのです。

もし、会社員の妻が亡くなったときに夫が55歳以上であれば、妻の遺族厚生年金を終身で受け取れる可能性もあります。これは、たとえば夫自身が国民年金のみの加入歴しかなく老齢厚生年金がない、あるいは少額であるような場合です。しかし、まだまだ会社勤めをしている方のほうが多いでしょうから、その場合は、夫自身が65歳になると、自身の老齢厚生年金との併給調整、すなわち妻の遺族厚生年金か、夫の老齢厚生年金か、どちらか一方の選択となります。

65歳時点で、自分の老齢厚生年金か死亡した配偶者の遺族厚生年金かいずれかの選択になるのは女性も同じです。高齢期における遺族保障は自分自身の加入歴に応じた年金額が遺族厚生年金より下回ったときに差分が補塡されるだけで、ここは男性、女性の区別なく同じ取り扱いです。

しかし子育て期、少なくとも子どもが高校を卒業し、19歳以上から一人前になるまでの期間の遺族保障の男女差は、もう少し時代に合わせた配慮が必要ではないかと思うのですが、そこが今の年金制度ではすっぽりと抜け落ちているのです。

亡くなった方の年収にもよりますが、仮に遺族厚生年金が年間40万円で中高齢寡婦加算が60万円とすると、子どもが高校を卒業したあとの国からの保障は、妻の場合と夫の場合では年間100万円の差が生じることになります。もし子どもが大学に行くとしたら、ちょうど年間の学費ぐらいに相当します。もし共働きの妻が若くして亡くなり、夫1人で子育てをしながら大学費用を貯めることが難しいかもしれないと不安を感じる方であれば、少なくともその分は民間保険の生命保険で準備するということも検討すべきでしょう。

たとえば、共働き夫婦にはこんなリスクもあります。共働きであっても、住宅ローンの名義は「便宜上は夫」となっている場合も少なくありません。この場合、夫が亡くなったときはローンの残債の支払いは団体信用生命保険によってカバーされて不要となりますが、妻が亡くなった場合、ローンの支払いはそのまま残ってしまいます。家計のやりくりも妻のほうが上手であれば、父子家庭の生活費は以前よりも膨らんでしまうかもしれません。子どもが小さいうちに妻が亡くなると、それまでのように残業もできず、年収が減ってしまうかもしれません。

もちろん、「なにがなんでも生命保険に入らなければならない」というわけではありません。しかし、守るべき家族がいる場合は、万が一にはしっかり備えるべきです。特に夫婦共働きの場合、国の保障の男女差が残されている現状を理解したうえで、家族の経済的な安心を守っていただきたいと思います。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

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やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

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