Jリーグに「赤字クラブ」が多い本当の理由 サッカーの特性や「Jリーグ規約」が足かせに

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親会社による損失補填を失ったFマリノスは赤字体質がさらに悪化。2013年度は6.7億円の債務超過に陥った。そんな折にJリーグは「クラブの財務健全化」を義務づけたクラブライセンス制度を導入、2015年1月期までに債務超過の解消を迫られていた。実現出来なければ、Jリーグ撤退の危機に瀕していたのだ。

そこで2014年、マリノスは英プレミアリーグの強豪、マンチェスター・シティのオーナーであるシティ・フットボール・グループ(CFG)と資本提携を実施、CFGはマリノス株の20%弱を握る大株主となった。今でもJリーグで外国資本を受け入れたクラブはマリノスだけである。

シティ・フットボール・グループとの会見に臨む日産のカルロス・ゴーン会長(2014年7月、今井康一撮影)

その後マリノスはスポンサー営業や選手獲得で、CFGが世界中に抱える専門チームを活用し収益力を強化。債務超過を解消しJFL降格の危機を免れた。

メリットはそれだけではない。「たとえば選手がケガをしたとき、CFGのメディカルチームと協議して、どこで手術すべきか決めている。複数の選択肢が得られる」と横浜マリノスの古川宏一郎社長は語る。

クラブの収益性が依然として低いことに関しては、「サッカーやマリノスを好きな人全員をまだマネタイズ(収益化)できているとはいえない。(利益創出の)機会はたくさんある」と意気込む。

「サッカー以外に手を出す」のも1つの道

湘南ベルマーレはNPO法人を設立し、そこでビーチバレーやトライアスロン、ラグビーなどサッカー以外の競技にも裾野を広げている。ベルマーレは16年度営業赤字に陥っているものの、サッカークラブの総合スポーツ展開は世界でも見られる。スペインの強豪FCバルセロナは傘下にバスケットボールやハンドボールなどのチームも抱えている。施設効率の良い競技を同時に手掛けることで、収益の安定化が望めるのが総合スポーツ化を図る理由の1つだろう。

一方、浦和レッズのように地域に根ざすことで、地元企業へのスポンサー営業を得意としているチームもある。

サッカー人気がこれまでにないほど高まる中で、その盛り上がりを持続させるには、クラブ経営が健全であることは欠かせない。Jリーグクラブが儲かる体質になれば、よりファン拡大に取り組む余裕も出てくるだろう。Jリーグ設立から25年の節目を前に、各クラブが自律的に収益源を育てていくことがより求められている。

岩崎 勇一郎 早稲田ユナイテッド 社長

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いわさき ゆういちろう / Yuichiro Iwasaki

株式会社早稲田ユナイテッド代表取締役社長。NPO法人ワセダクラブ理事。東京都出身。小学校からサッカーを始め、国学院久我山高校、早稲田大学ア式蹴球部で活躍。早稲田大学大学院理工学研究科(博士課程・遺伝子工学)修了の後、同大学院MBAプログラムを修了。2007年に文武両道・グローバル教育型のサッカークラブを設立し、翌2008年には運営会社である株式会社早稲田ユナイテッドを設立する。

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