Jリーグに「赤字クラブ」が多い本当の理由 サッカーの特性や「Jリーグ規約」が足かせに

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それは、サッカーは野球球団のようにクラブ名に企業名を入れることはできないという点だ。1993年のJリーグ立ち上げ時、欧州をモデルとした地域に根ざしたクラブ運営を目指したため、Jリーグはチーム名に企業名を冠することを禁止している。

たとえば株式会社ガンバ大阪は、パナソニックが70%の株式を握る親会社だが、クラブ名にその名はない(ホームスタジアムは大阪府吹田市保有のため、パナソニックはネーミングライツを5年間で10.8億円支払い、2018年1月から「パナソニックスタジアム吹田」となる)。最も広告価値のあるチーム名に企業名を入れられないとなれば、スポンサーとなる魅力は半減してしまう。

ユニフォームやスタジアム内看板などの広告料もあるが、一部の強豪・古豪チームのみが大企業の後ろ盾を得られているというのが実情だ。

また、収入源の「Jリーグ配分金」のうち、全クラブ一律に支払われる「均等配分金」はカテゴリーが上であるほど高く設定されており、J1が3.5億円、J2が1.5億円、J3が3000万円に設定されている。そのため、リーグ降格による損失が大きくなっている。厳密には「降格救済金」により、降格1シーズン目のみ前年度均等配分金の80%は保障されるが、リーグの降格は億単位の収益変動につながるため、経営の観点からも何としても避けたい事態なのだ。

そのため、コストを削って降格するくらいであれば、投資を増やしリーグ残留を目指したほうが経済合理性にもかなうため、そもそも利益創出が優先されないチームも多い。Jリーグクラブの経営不振の常態化には、こうした背景があるのだ。

DAZN効果で潤うも、貧富の差は広がる

2017年からはJリーグ配分金が大幅に増えるため、どのクラブも収入増が見込まれる。Jリーグは動画配信サービスDAZNを運営する英・パフォームグループに、放映権を10年総額2100億円で付与する契約を結んでおり、その分、各クラブに対するJリーグ配分金が増加するのだ。

ただ、リーグ戦などで好成績を残したチームに多く分配される仕組みとなっており、今季J1で優勝した川崎フロンターレは総額22億円以上の配分金を受け取るなど、クラブ間の貧富の差は広がる見通しだ。

クラブも手をこまぬいているだけではない。日産サッカー部に源流をもつ国内名門の横浜F・マリノスは外資を受け入れ経営改善した好例だ。

11月下旬の土曜日、日産スタジアムは試合開始2時間前から、今季最後のホームゲームにかけつけた横浜F・マリノスのサポーターであふれていた

マリノスは設立以来赤字体質で、広告料を名目に親会社・日産自動車から赤字補填を受け、収支を合わせていた過去がある。

しかし、リーマンショックで日産本体が赤字転落したことで、2009年1月期から日産はマリノスに対する赤字補填を停止。日本の自動車市場が縮小する中で、日本でしか広告効果のないJリーグクラブに大枚をはたいている場合ではなかった。

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