米国が突然エルサレムを首都に認定する事情 アラブ諸国は一斉に反発の声
レバノンでは、イランと同盟を組むシーア派武装組織ヒズボラが政権内で影響力を強め、サウジアラビアの隣国イエメンでもシーア派系のフーシ派が政権を掌握。これにより、イランは中東にある4つの首都を押さえているといわれる。サウジは、2015年にフーシ派の攻勢を食い止めるために軍事介入したが、撤退論もささやかれている。
こうした中、サウジが欲しいのは、イスラエルが持つイランやイエメンに関する軍事情報や軍事技術である。ムハンマド皇太子は11月、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長をリヤドに招いて会談しており、パレスチナ側に不利な和平案を受け入れなければ、財政的な支援を停止すると迫ったのではないかとの憶測も流れた。
「パレスチナを売り渡そうとしている」
サウジは2002年、イスラエルが占領地から撤退する代わりにアラブ諸国がイスラエルを国家として承認する包括的な和平案を提唱しており、情報が事実とすれば、イスラエル寄りに政治姿勢が大幅に傾斜したことになる。こうした動きに対し、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは「サウジアラビアが対イランでイスラエルに急接近し、パレスチナを売り渡そうとしている」との論評を掲載した。
米政治サイト「ポリティコ」は、クシュナー大統領上級顧問に近い筋の話として、アラブ指導者らの反対は見せかけだけだと伝えた。小規模なデモや反対運動が起きる「冷却期間」を置いて、アラブの同盟諸国は、米国が2018年の早い段階で発表する予定の中東和平案に協力するとクシュナー氏は見ているとしている。
エルサレム帰属問題は、イスラム圏全体の宗教感情も絡むだけに、どのような反応が巻き起こるかは予断を許さない。ホワイトハウス内でも予測困難との声があり、事態の推移を慎重に見守っているという。
ただ、イラン問題に手足を縛られた形になっているサウジなども米政権に真っ向から反対を唱えることはできず、対抗策は限られそうだ。もっとも、中東和平は一段と遠のいたとの見方で中東専門家は一致している。日本が石油を依存する中東の不安定感はさらに高まり、反米テロも懸念される事態になりそうだ。
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