米国が突然エルサレムを首都に認定する事情 アラブ諸国は一斉に反発の声

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ロシア疑惑で窮地に立つトランプ大統領は、支持基盤である親イスラエル系の保守勢力や、キリスト教福音派の支持を確固たるものにするためにも、国内政治の観点から公約の実現は有利と判断したはず。

ビル・クリントン政権下の1995年に制定された米国内法により、エレサレムへの大使館移転は義務づけられている。歴代大統領は和平への影響を考慮して判断を先延ばしする大統領令に署名し、トランプ大統領も今年6月、「移転の先延ばし」を表明していたにもかかわらず、今回の決定になったことからも政治的な思惑が働いていたことがうかがえる。

急接近するイスラエルとサウジアラビア

トランプ大統領は「歴代大統領は、移転延期が和平プロセスを進展させると信じてきたが、和平合意にまったく近づいていない。(紛争解決に向けた)新しいアプローチの始まりだ」と決定を正当化した。決定には国内的な事情があるのは確実だが、中東の政治情勢も影響している。歴史的に敵対してきたアラブの盟主を自任するサウジアラビアとイスラエルの急接近である。

9月にはサウジのムハンマド皇太子が、イスラエルを極秘訪問し、イラン問題や中東和平問題で意見交換したとの未確認情報が飛び交った。また、サウジ系紙エラフは11月中旬、イスラエル軍トップのガディ・アイゼンコット参謀総長のインタビューを掲載。サウジ紙がイスラエル軍高官を取材するのはこれが初めてで、同参謀総長は、中東最強の軍隊を持つイスラエルが有するイランの情報を穏健なアラブ諸国に提供する用意があるとして、サウジに秋波を送った。

ユバル・シュタイニッツ水・エネルギー相も軍ラジオで「多くのアラブ、イスラム諸国と関係を持っている」と明言し、サウジとの関係深化を暗に認めた。両国が急接近する背景には、イランやサウジを中心とする宗派間対立が激化する中、イラン有利の情勢にサウジが焦りを募らせていることがある。

イランは、ロシアとともにシリア内戦に軍事介入してシーア派に近いハーフィズ・アル=アサド政権のバックアップに尽力したほか、イラクでも、2003年のサダム・フセイン政権崩壊後のシーア派主導政治を後押しした。

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