TBS「陸王」に沸くロケ地・行田の熱気と課題 ドラマ効果で名産の足袋が売れまくり
「行政だけでなく、市民の皆さんのおかげで撮影が実現できた部分は大きかった。1軒1軒回って撮影の許可をもらった。ほとんど実績がなかったが、撮影チームが携わった愛知県豊橋市や広島県福山市などの各自治体にアドバイスをもらいながら、フイルムコミッション(映画・ドラマの撮影場所誘致や撮影支援をする機関)としての体力や体制が整ってきた」と行田市役所商工観光課の森原秀敏課長は話す。
「陸王」の経済効果は1カ月あたり1億5000万~2億円、視聴率が上昇すればさらに増える見込みだという。ちなみに2012年に公開された戦国時代の、後の忍(おし)藩(現在の行田市)が舞台の映画『のぼうの城』にともなう経済効果は40億円だった(ぶぎん地域経済研究所が2012年12月に発表)。
年間生産量を大きく超える受注が殺到している
特に陸王効果が大きいのは足袋だ。ドラマの中で「こはぜ屋」の足袋や、その技術をベースにした陸王が何度も映し出されるのは印象的で、これが視聴者に強く訴求している。
「これまでの年間生産量を大きく超える受注が殺到していて、生産が追いつかず、市内の足袋業者はフル稼働の状況。いままでこんなことはなかった」と工藤市長も驚きを隠せない。森原課長も「陸王関連グッズの好調な売れ行きや足袋の生産が追いつかない状況を考えると、経済効果はさらに期待できるのではないか」と見る。
市内の観光地をめぐる観光客もドラマの影響から増加傾向にあるようだ。ドラマ中にも登場した行田市の銘菓「十万石まんじゅう」(十万石ふくさやが製造)や、「陸王たび煎餅」(戸塚煎餅店が製造)など関連商品も売れ行き好調。市内の事業者や地元商店主にとっては絶好の機会となっている。
今から約300年前に足袋作りを始めた行田市は、昭和の初期に需要の最盛期を迎え全国の約8割のシェア、ピーク時には年間約8000万足を製造していた日本最大の足袋製造元だった。一方、和装文化に欠かせない存在だった足袋も、洋装文化が進むにつれ靴下に主役の座を奪われてしまう。足袋の需要は年々減少し、近年は年間数百万足の生産にとどまっている。
それでも現在も数社の足袋業者が「行田足袋」を作り続けている。最近では、行田市内に点在する足袋蔵(足袋を保管する倉庫)や足袋作りの伝統が認められ、2017年4月には文化庁が整備を進める「日本遺産」に埼玉県で唯一認定された。
「いちど廃れてしまった産業が復活するケースはなかなかない。日本遺産の認定や陸王効果で『行田足袋』の復活に期待している。ドラマの中で100年前のミシンを手作業で修理しながら使っている描写があるが、それは本当のこと。私も市長に就任してすぐに足袋屋さんを訪れたが、本当に直しながらミシンを使っていてびっくりした」と工藤市長は明かす。
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