最新鋭機開発で混乱続くボーイングとエアバス--振り回される日本企業の苦悩

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小


合弁会社を解体 「超」先進性がたたる

だが、机上のプランと現実は違った。「グローバルチェーンが力を発揮したのは事実。が、いかに忠実にデータを入力しても、造るのは人間。コンピュータはミスまでは見つけてくれない」(日本企業幹部)。

ファスナー不足と相まって、未完成のまま、ボーイングに運び込まれる「トラベル・ワーク」が山と積み上がった。中には、指示書が添付されていないもの、あっても表記がイタリア語のものがある。ところが、“サクサク”を想定していたから、ボーイングの現場は他人の仕事をやる体制にはなっていない。

マクナーニーCEOは社内メモで、「2次、3次下請けまで、在庫の“見える化”をやっておくべきだった」と反省したが、後の祭りだ。

ティア1同士のボートとアレニアが合弁で設立したエアロノーチカ。川重の前部胴体と富士重工が担当する中央翼がここで結合される。今年3月、ボーイングはエアロ社に対するボートの持ち分50%を自ら取得した。「ボートさん、ここはいいから、後尾胴体を造る自分の仕事に専念してください」--。ボーイングの堪忍袋の緒が切れたのである。

しかし、トラベル・ワークの最大の原因は、787が技術的に「遠くへ」行きすぎたことにある。「陳腐なものなら、こんな苦労はしない。トラベル・ワークが多いのは、頻繁に設計変更があるから」(日本企業幹部)。効率性の極限を求め、出荷寸前でもボーイングから設計変更が来る。設計変更すれば、重量も強度も違ってくる。いちいち解析し試験して、やっとモノを作ると、追いかけるようにまた変更。

787は航空機の技術に革命を起こした。世界初のカーボン・プレーンであることがその最たるものだが、システム面でも、例えば、航空機の常識だった「ブリード・エア」(エンジンからの排出ガスを翼の結氷防止や客室気圧制御に利用する)を使わず、電動化した。これによってエンジンの負荷を軽減し、燃費が1~2%向上すると言う。

米国の航空専門誌『アビエーションウィーク』(07年11月26日号)で、787のシステム・ディレクターが語っている。「40年以上、システムでは本当の意味で大きな改良はやってこなかった。だが、今回は革命的な飛躍をしようとしている」。

その同じディレクターが、こうも言っている。「開発には三つのことが付き物だ。【1】航空機は難しい。【2】開発スケジュールはキツすぎる。【3】新しい機体を開発するときは、新しいやり方に手を出すな。やってしまった後で、いつも、もう同じことは繰り返すまい、と思うのだが」。

787に遅れること2年半、06年末、787の対抗機としてエアバスが開発着手したA350XWB(250~350席)。より革新的なコンセプトが満載かと思えば、そうではない。

炭素繊維の使用比率は54%と787を上回るが、一体成形ではなく、複数のパネルを張り合わせる。「ブリード・エア」を使い、ブレーキも787のような電動ではなく、従来どおり油圧ブレーキを採用する。エアバスによれば、「そのほうが軽いし、コストも安いから」。そこには、大急ぎで「遠くへ」飛んだ787を反面教師とする視線がある。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事