最新鋭機開発で混乱続くボーイングとエアバス--振り回される日本企業の苦悩

お披露目機は“がらんどう” ファスナー不足が引き金に

ボーイングはエアライン58社、895機について、同じ交渉を繰り返さねばならない。こうなると、史上最速の受注機数が恨めしい。

エアバスはA380の納入が2年遅れ、2006年、07年と2年続けて赤字にまみれた(EBIT=利払い前税前利益がそれぞれ5・7億ユーロ、8・8億ユーロの赤字)。ボーイングにも痛い体験がある。1997年、受注殺到で現場が大混乱を来し、正常化のために737(130席)と747(415席)のラインを3週間止めた。3週間の代償が26億ドル(2782億円)だった。15カ月だと、いったいいくらにつくのか。

1年前の7月8日、シアトルのボーイング・エバレット工場。天の岩戸を引くように、工場の扉がしずしず開くと、真っさらな航空機が現れた。787「ドリームライナー」のロールアウト(初号機のお披露目)である。新世紀の航空機は1万5000人の歓呼の声に包まれた。

ところが、完璧な完成体に見えた初号機は、実は、“がらんどう”だった。数千本の仮のファスナー(締め具)でつなぎ合わされたため、前胴と中胴のつなぎ目には7ミリのすき間が開いていた。セレモニーが終わり、組立工場に戻された初号機は、水平翼、尾翼、動翼、エンジンを取り外され、バラバラにされてしまった。それから14カ月。その初号機が、まだ空を飛んでいない。

ボーイングのJ・マクナーニーCEOが社内メモで率直に認めている。「ちょっと遠くへ行きすぎ、ちょっと急ぎすぎたかもしれない」。急ぎ方は「ちょっと」どころではない。787の開発期間は777より1年短い。しかも、いきなり、空前の量産体制を立ち上げる。語呂合わせのロールアウト(7月8日/07年)に向けて、世界中のサプライヤーが尻をたたかれた。「青息吐息で血みどろの設備投資を進めてきた。100人が100人、全速力で走ってきた」(日本企業幹部)。

混乱に拍車をかけたのが、ファスナー不足だ。そもそも、787は炭素繊維複合材で一体成形するため、約8割、4万~5万本のファスナーを削減でき、その分軽くなるという触れ込みだった。が、メーカーにすれば、量が絞られるのだから設備投資は差し控える。需給が逼迫し、本来のメリットがデメリットに転化してしまったパラドックスである。

生産方式でも技術面でも、あまりに「遠くへ」行きすぎた。まず生産方式。ボーイングは787で航空機の造り方を根こそぎ変えた。従来、生産の主導権はあくまでボーイングが握っていた。日本は777の生産に参加したが、たとえば、胴体も日本はパネルを作るだけで、それを筒状に仕上げるのはアチラだった。

今回、ボーイングは重要な部位でも丸ごと、システムごと主要(ティア1)サプライヤーに委ねる方式に切り替えた。ティア1は日本の3社に加え、イタリアのアレニア、米国のスピリット、ボートの6社。

基本設計はもちろんボーイングだが、詳細設計以下の開発・設計はティア1に任せてしまう。電装品やシステム機器も9割方、ティア1で装着され、ボーイングは送られてきた準完成品をサクサク組み立てるだけ。これなら、開発リスク、資金リスクをティア1に分散できるし、史上最速の量産化も達成可能、とボーイングは踏んだのである。


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