販売店が悲鳴、スバルが直面する新たな試練 無資格検査リコール対応で整備士不足に拍車

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しかしながら、整備工場からは悲鳴が上がる。以前に比べ、時間との闘いがよりシビアになっているからだ。2年ほど前なら、納期に間に合わせるために徹夜で仕事をするということもできた。しかし働き方改革が唱えられる中で、夜10時以降の残業は禁止に。ただでさえギリギリで回している体制の中、同じ時間内で対応するのは非常に厳しい。ある販売店の幹部は「負担は増えているが、目の前のことをやっていくしかない、と整備士たちに話している」と述べる。しかし、こうした状況に不満が高まれば、ただでさえ少ない整備士が辞めてしまうおそれもある。

「リコール後1カ月間がいちばん厳しい」

メーカー側は「お客様が駆け込む最初の1カ月がいちばん厳しい。心が折れないよう、最前線の現場を支えていく」(吉永社長)と、販売店への支援を惜しまない考えだ。とはいえ、200億円のリコール対応費の多くは、リコール自体の工賃(1台当たり2万円)や顧客に対する重複作業費に充てられる見込みだ。整備士増員への投資や販売会社のスタッフへの特別手当など、販売店の負担軽減に向けた対策が求められている。

スバルが今春発売した新型「XV」。無資格検査に伴うリコール対応で現場が繁忙を極める中、好調な国内販売を維持できるかに注目が集まる(撮影:尾形文繁)

新車販売への影響はどうなのか。テレビなどでの広告宣伝を止めているため、新規顧客を取りにくくなっているほか、フェアなどの店頭施策も一部自粛している。11月上旬には解除する予定だったが、12月上旬ごろまで長引く予定だ。スバルの場合、新車の受注から納車まで2カ月ほどかかるため、今年の年末ごろから順次、販売台数にも影響が表れてくる可能性がある。

「安心と愉しさ」というコンセプトを打ち出し、水平対向エンジンやアイサイトに代表される高い機能性を武器に、販売を伸ばしてきたスバル。販売拡大は、顧客と直接かかわる販売店へのシワ寄せをも生んでいた。対処が追いつかないまま、過去に例を見ない規模のリコールに大きく翻弄されている。販売の最前線で余裕がなくなれば、顧客との密なコミュニケーションが不可能になり、スバル車のよさを訴求できなくなるのは自明だ。はたして、この1年で、現場の混乱を収束させることができるのか。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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