Tカードが「おいしい牡蠣」を生み出す仕掛け

「40億件の購買データ」が漁業の活性化に貢献

第1弾としては、東日本大震災で多大な影響を受けた三陸の漁業を取り上げることとなった。地元の漁業従事者にヒアリングするなかで、彼らが大きな課題意識をもっていたのが“牡蠣”だったという。

「ファンが多いと思われがちですが、実は牡蠣好き人口はそれほど多くはなく、私たちの実施したアンケート調査では、牡蠣好きな人は全体の3分の1との結果でした。また冬が旬というイメージが強く、売れる時期が限られる。同じく牡蠣で有名な広島は加熱して食べる文化が進んでいますが、三陸は海がキレイなことで逆に、生で食べられるほうが多く、加工業がそれほど発達していません。結果的に、牡蠣産業の年間を通じての拡大があまり進んでいません。震災の影響もあって、漁師の減少も課題となっています」(瀧田氏)

そこで、三陸における牡蠣の六次産業化(加工)、つまり、一次生産者が生産物の加工、流通、販売までを行う仕組みづくりがプロジェクト第1弾の目標となった。

これにより、漁業の活性化、また三陸の魅力を広く知ってもらい、観光客を誘致することなどができるという狙いだ。

商品開発にかかわったのは、前述の選ばれた9人を中心に、一次生産者であり商品製造を担当する「フィッシャーマン・ジャパン」など、三陸の漁業従事者。そのほか、スーパーなどのTポイント提携企業も、流通という立場から商品開発に参加した。なお、フィッシャーマン・ジャパンとは、震災後の2014年に三陸の若い漁師が中心になって立ち上げた一般社団法人。漁業を「新3K(カッコイイ、稼げる、革新的)」にし、三陸に若い漁業従事者を増やすことを目的に活動をしている。

選ばれた9人とはどのような人物なのか

Tポイント・ジャパン企画本部ロイヤリティ企画部の瀧田希氏(筆者撮影)

それにしても、会員6000万人から選ばれたこの9人とはどんな人たちなのだろうか。実際には、全会員のうち、購買データから導き出された魚介や食へのこだわりの強い人55万人にメールを送り、応募があったのは565人。そのうちの9人ということになる。

「26歳から69歳まで、職業などもさまざまな、男性4人女性5人です。ですが食や魚介に関しては相当“濃い”メンバーです。たとえば、洋食屋さんを回ってはカキフライばかり食べ続けている人もいますし、自分で食のイベントを立ち上げて運営している人もいます。本当にアクティブな方々で、初対面から意気投合してメンバー同士で交流が進みました」(瀧田氏)

開発メンバーには、石巻への1泊2日フィールドワークや試食会・打ち合わせ数回のほか、各自でレシピのアイデアを出すことなどが課せられた。しかしそれ以外にも、メンバーからTポイント側にプロモーションを提案するなど、積極的に参加してもらえたことが、プロジェクトの推進力となった。

「メンバーの負担もかなり大きいですし、そもそもチャレンジングなプロジェクトでした。また、苦労したのが、9名のT会員、地元の漁師や加工業者、流通とさまざまなステークホルダーが納得のいく商品を作りあげること。すべてのフェーズに困難がありました。だから商品ができあがったときには、メンバーから『本当に発売されるなんて』『自分の子どもみたい』という声が聞かれました」(瀧田氏)

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