会社を辞める時は保険も見直さないとヤバイ 3000万円超の保険を解約するのと同じ!?

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実は会社を辞めて、厚生年金から国民年金に変わると、万が一の死亡時の遺族年金も変わります。男性の会社員が亡くなると、妻には一生涯にわたって、遺族厚生年金が支給されます。さらに子どもが高校を卒業してから妻自身の老齢基礎年金受給開始となる65歳までの間、中高齢寡婦加算と呼ばれる「厚生年金の奥さん手当」が支給されるのですが、これらが残念ながら、不支給となるのです。

たとえば夫40歳会社員、妻40歳、子ども10歳の家族を考えてみましょう。この場合、会社員の夫が亡くなると妻が一生涯遺族厚生年金を受給します。遺族厚生年金は夫の老齢厚生年金の4分の3で、実際にはそれぞれの厚生年金加入歴(給与に比例した保険料)に基づいて計算されますが、今回は仮に45万円とします。この遺族厚生年金を90歳まで妻が受け取ると、総額は2250万円となります。

また子どもが18歳になるまでは遺族基礎年金が約100万円受給でき、さらに子どもが高校を卒業すると、その後妻が65歳になるまで約60万円の中高齢寡婦加算が受けられます。この2つの年金を合計すると1820万円となります。遺族厚生年金と合わせると、4070万円です。

独立開業したら…

一方、もし夫が会社を辞め独立開業をすると、遺族基礎年金(約100万円×8年分=800万円)は国民年金を財源とした給付ですから、自営業になっても受給できますが、厚生年金加入者ではなくなります。ですから、前述の遺族厚生年金2250万円と、中高齢寡婦加算(妻が65歳になるまで受け取る分1020万円)が受けられなくなります。つまり、3270万円の国からの保険金が仕事を辞めたとたん失われるわけです。

つまり、独立起業をする場合、失われる厚生年金の万が一の給付額分は民間保険で補っておかなければ、過去と同じ水準で家族の生活を維持することができないことになります。

「これまで何年も厚生年金に加入して、高額な保険料も負担してきたのに、会社を辞めたとたん給付がもらえないなんて!」と思われるかもしれませんが、これが今の公的保険の仕組みなのです。国民年金厚生年金合わせて年金加入期間が300カ月を経過すると、かつての厚生年金加入期間における遺族保障が復活するという「長期要件」もありますが、それでも厚生年金被保険者が亡くなったときほど、手厚い保障ではありません。やはり転職の際は、国の保険、民間保険の再確認、見直しのタイミングなのです。

なお、筆者は一般社団法人である公的保険アドバイザー協会の理事として、公的保険の知識の普及に努めています。しかし、保険のプロでも、仕事が変わることによる公的保険の変化と、対処方法まではお伝えしきれていないようです。今回書いたように、公的保険は国保なのか、健保なのか、または組合健保なのか、国民年金なのか、厚生年金なのかによって保障が異なります。仕事が変わるときは民間保険の見直しのタイミングということを知ったうえで、民間保険とも上手に付き合っていただければと思います。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

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やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

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