50歳フリー「広告写真で稼ぐ男」の痛快な人生 本領は職人、いい仕事こそが次の仕事を生む

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仕様書にない障壁はひたすらアイデアを練って工夫することでしのいでいった。水面下には長かった下積み時代に培った経験と知識がある。持ちうる能力をつぎ込んでどうにか納品すると、クライアントからはとても感謝された。その評価は次の仕事を生み、さらに先の仕事にもつながっていった。仕事が仕事を生む好循環。暇や生活費に悩まされることなく今日まで来ている。

よい仕事をすれば次の仕事が生まれる

よい仕事をすれば次の仕事が生まれる。その原理は、ギャラの相場や請求書の切り方を覚えるよりずっと前から知っている。

中学以降、父の現場をたびたび手伝ったが、仕上げが雑だと厳しく怒られた。たとえば、土間を仕上げるときには将来水たまりができないように徹底して水平にしつつ、水をドレーンに向かわせるためにかすかな傾斜を計算して作る。その傾斜が目立ってはいけないし、水で濡れたときはしっかりと機能しなければならない。そんな精度の仕事を当たり前のようにこなす父の姿を見て育ち、仕事とはこういうものだという感覚が体の芯にしみ込んでいた。

実際の仕事写真(写真:福永仲秋)

クライアントの依頼を自らの専門技術と経験を駆使して、高い精度で実現する。そこにやりがいを感じてとことん熱中できる性分だ。フリーランスになって、福永さんは自らの本領は職人だと改めてかみしめたという。

「クライアントから依頼があったら、その仕様にあったモノをできるだけ効率的に高精度で作って、そのうえでちょっとだけ自分の感性を加える。そうすることで次の仕事につながるし、自分流の色があるから『福永の画(え)がほしい』と言ってもらえるようにもなる。そうこうしているうちにだんだん仕事が広がっていった感じです」

そこからは水を得た魚のように生活が研ぎ澄まされていった。

カメラは最初期からデジタルを導入しているが、少しでも早く加工処理が完了するようにパソコンもハイスペックなものを頻繁に買い換える。それと同時にフォトショップを使いこなすべく、1日1時間操作する義務を自らに課したりもした。同業のなかでも新技術の導入が早くときに新しモノ好きと言われたりしたが、本質は効率をひたすら追い求めるために道具を更新しているにすぎず、愛でる感覚は持ち合わせない。道具としてとことんドライに使いこなして、不要になったら排除していく。

「自分のなかで手を抜いてしまったと感じたものは、何年も頭のなかに残ります。それが嫌なので、そのときの最大限をやるようにしています」という(写真:福永 仲秋)

仕事以外の時間も気を抜かない。通勤中や休憩中は、視界に入る景色からちょっと異質なものを感じると、コンパクトデジカメや携帯電話でそこを切り取って記録する。2011年にFacebookやInstagramを始めてからはスナップの一部をアップするようになったが、それ以前から続けている習慣だ。

「切り取ると面白いと思う景色って、ぼわーと浮いて見えるんですよ。それを見つけたら、あえて自分の色を出した撮り方でスナップします。そうやって個性を鍛えておけば仕事の場面でも生かせますし、SNSにアップすれば自分の宣伝にもなりますからね」

情報収集も欠かさない。毎朝、経済新聞に目を通し、毎年、世界規模の家電見本市に足を運ぶ。そして、新たな広告の企画を考えたりしている。

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