「10月7日 都内の朝です。写っているのは、階段と手すりの影です」
カメラマンの福永仲秋(ふくなが なかあき)さん(50)は、FacebookやInstagramで日常的に写真をアップしている。仕事の合間やプライベートの時間に撮ったそれらの写真は日本のどこにでもある風景を切り取ったものだが、どこか幾何学的であったり幻想的であったりして、不思議な気づきを与えてくれるものが多い。
フリーランスのフォトグラファーとして、広告や雑誌等を中心に20年近く第一線で活躍している。出版不況や紙媒体の減衰、リーマンショックなどさまざまな向かい風が吹くなかでも、請け負う仕事の単価は下げず、むしろ上がり続けるような戦略を立ててこれまで実践してきた。誰とチームを組むでもなく、基本は1人で営業から制作まで完結させる。この手法で海外を含む大小多彩な企業と渡り合って、長年社会に作品を残してきた。
芸術か産業か。孤高か連携か
フォトグラファーにはアート系や報道系の道もあるし、チームを組んでプロダクション形式で仕事を請け負うスタイルも多い。福永さんも若い頃はそれらの選択肢が眼中にあったという。そこから現在のように広告・雑誌を舞台に仕事をする職人スタイルに至った背景には、どんな出来事や思索があったのだろう。
芸術か産業か。孤高か連携か。フォトグラファーに限らず、多くの人が対峙するような人生の岐路を深く納得しながら選んできた。そんな福永さんの半世紀をたどっていきたい。
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