大手ゼネコン、手元資金「1.4兆円」の向かう先 好況のうちに成長への布石を打てるか

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好業績を受け、株価も右肩上がり。4社はいずれも11月上旬にこの十年来の最高値を更新。2017年の年初と比べて、鹿島や大成建設は40%超の上昇と、日経平均株価(約15%高)を大きく上回った。

もう一段の株価上昇には成長戦略と株主還元策という2本の柱が欠かせない。

鹿島は不動産事業に注力しており、首都圏のほかシンガポールでも複合施設開発に約1000億円を投じる。大林組は不動産賃貸や再生エネルギー、清水建設もビル管理や省エネ関連などを強化する構えだ。

ドイツ証券の大谷洋司シニアアナリストは「海外ゼネコンは通信や水道など異業種のストックビジネスも手がける。日本もそうあるべきだ」と指摘する。

置き去りの株主還元

一方で、株主還元の課題は大きい。大成建設や鹿島は中期経営計画の中で借入金の抑制を表明したが、配当性向は2割強と全上場企業平均(約35%)を下回る。

大林組も自己資本比率の強化を優先課題に掲げるなど、「建設需要の減退に備えて、今のうちに体力をつけておく」(大手ゼネコン幹部)。

「成長事業への投資は不可欠だが、株主は自社株買いなど短期のリターンを求める。手元資金を投じるバランスが重要だ」(大谷氏)。

好況のうちに成長への布石を打てるか。与えられた時間は多くはない。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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