仮設住宅での40代孤独死、なぜ防げないのか

福祉とのつながり欠く、安否確認活動の限界

「ご本人が居留守を使っていたようで、サポートセンターの職員もなかなか会うことができなかった」。同センターを所管する気仙沼市の高齢介護課の課長は取材でこう説明した。

同席した生活保護の担当部署の課長によれば、保護の申請は出ていなかったという。「ご本人から明確なSOSがなければ、なかなか対応は難しい」。生活保護担当部署の課長は支援の限界について語った。

市役所は手をこまぬいていたわけではなかった。アヤさんは震災前から母親と同居していたが、震災から2年後に母親が病気で亡くなり、家計の支えだった母親の年金収入が断ち切られた。アルコール依存症もあり、サポ-トセンターによる見守り活動でもフォローが必要なケースに挙げられていた。

アヤさんはコンビニエンスストアで働いていたこともあったが、仕事に突然来なくなり、周囲をやきもきさせた。うつ症状も悪化し、仮設住宅の自室に引きこもりがちになっていった。

相次いだ自治会の解散

同じ頃、仮設住宅の状況も大きく変わっていった。市内で災害公営住宅が相次いで完成し、仮設住宅の自治会の解散が相次いだ。世話役を務めていた仮設住宅の自治会長らも転居し、目をかけてくれる人がいなくなった。

そうした環境の変化とともに、アヤさんを追い込んだのが災害公営住宅の家賃の問題だった。「思ったより家賃が高い」。そう感じたアヤさんは災害公営住宅への入居を2度もキャンセルし、周囲を慌てさせた。その一方で、生活保護については、「兄弟に迷惑をかける」という理由で、知人に勧められても申請に出向くことはなかった。病気がちだったが、通院も途切れがちだった。借金も抱えていたという。

気仙沼市が作成した支援者ミーティングの議事録(2012年当時)。仮設住宅ごとにフォローが必要な人の情報を集めていた(記者撮影)

しかし、いつまでも家賃のかからない仮設住宅にとどまることは認められていない。市役所からは、転居先についての説明を求められていた。アヤさんは精神的にも追い詰められて、門戸を閉ざすようになっていった。

「ガスを止められたことを知った時点で、思い切った対応はできなかったのか」

本誌記者の質問に対して、「そこまで生活が困窮していたとは想像できていなかった」と前出の生活保護を所管する部署の課長は説明した。「年齢が若く、仕事をしていたこともあったので、すぐに生命の危険があるとは認識できていなかった」とも課長は話した。

しかし、ガスを止められたこと自体、尋常ではない。そのことを知った段階で、市はアヤさんを生活困窮者と見なして支援の方途を探るべきではなかったのか。

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