スーパースター・小泉進次郎氏の3つの死角 変人宰相だった父は「親子鷹」より「他山の石」
今回の選挙戦で小泉氏に対抗する形で注目を集めたのは、希望の党を立ち上げた小池百合子東京都知事だったが、選挙応援と聴衆の反応をみる限り「小泉氏の完勝」(自民選対)に終わった。
首相の解散表明に先駆けて希望の党結党と代表就任を宣言して一時は選挙戦の主役を演じた小池氏だが、「敵の総大将」への小泉氏の先制パンチは強烈で、「今回の選挙の構図は『責任対無責任』の戦い。小池さんは出ても出なくても無責任。ぜひ出てきて欲しい」と衆院選出馬説で選挙戦をかく乱した小池氏を痛烈に批判した。
これまでの成功体験から「選挙はテレビがやってくれる」が持論の小池氏だけに、すぐさま「進次郎さんがキャンキャンはやし立てているが、出馬は100パーセントないと最初から申し上げている」と反撃したが、急所を突いた小泉氏の批判を跳ね返すことはできず、テレビの情報番組などもそろって「小池氏の負け」との趣旨で報じた。
小泉氏は選挙戦最終日の10月21日夕刻、応援演説のフィナーレとして小池氏の地元のJR池袋駅西口に登場し、「真の国民政党とは何かを考えるようになったのは小池さんのおかげ。小池さんありがとう」とこぶしを突き上げて勝利宣言した。
「聞きましょう」という運動神経のよさは天性
国政選挙の応援を重ねるにつれて演説力が増す小泉氏の最大の強みは「聴衆のハートをわしづかみにする当意即妙の対応」(自民幹部)だ。選挙戦半ばに、失速した小池氏に代わる「野党の星」となった枝野幸男立憲民主党代表と街頭演説でぶつかった小泉氏は、街頭宣伝車の上で演説中の枝野氏を見やりながら、「皆さん、あちらの演説を聞きましょう」と黙って手を振り続け、「若さに似合わぬ懐の深さ」と聴衆を感動させた。こうした心憎いばかりのテクニックは「努力だけでは得られない天性のもの」(自民長老)とされるが、政治家としての「運動神経のよさ」も見せつけた場面だった。
選挙で安倍1強政権維持の立役者となった小泉氏だが、その後の首相の政権運営については苦言を呈する場面が目立つ。まず、衆院選投開票日の10月22日のテレビ出演では 「おごり、ゆるみだけではなくて、(国民の安倍政権に対する)飽きを感じた。だんだん飽きてきている。加計学園の問題を含めてまだまだ不信感をもっている方が全国に相当いる、というのを街頭演説で感じた」と指摘し、 首相の自民総裁3選についても「政治というのは何がおきるか分からない。来年のことを話すのはまだ早い」と語った。
さらに、首相が10月27日の「人生100年時代構想会議」で、選挙公約でもある教育無償化の財源確保策で「産業界においても3000億円程度の拠出をお願いしたい」と求めたことについて、小泉氏は「党は何も聞いていないし、まったく議論していない。このままだったら、自民党は必要ない」と厳しい口調で批判した。
自民党内の「重要政策はすべて官邸主導で決まる」との不満を代弁したもので、菅義偉官房長官は「与党とも当然相談しながら進めていきたい」と応じたが、若手議員の批判を内閣の大番頭がすぐさま受け入れるのは異例で、政府与党首脳も小泉氏に気を遣うという構図が際立った。
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