スーパースター・小泉進次郎氏の3つの死角 変人宰相だった父は「親子鷹」より「他山の石」

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首相が3選を目指す来年9月の自民党総裁選について、党内では「キーパーソンは小泉氏」(自民長老)と見る向きが多い。「石破(茂)氏ら対立候補が出馬した場合、小泉氏が誰を支持するかで展開が変わるのは確実」(自民幹部)だからだ。首相と石破氏(元地方創生相)が決選投票にもつれ込んだ2012年総裁選で、小泉氏は1回目、決選ともに石破氏に投票した。

父親の純一郎元首相が後継指名した首相ではなく、そのライバルの石破氏に投票したことで永田町では「小泉氏は反安倍」との風評も広がった。小泉氏が当選1回だったこの総裁選でも、知名度抜群の小泉氏の支持を取り付けようと各陣営が争奪戦を演じただけに、来年の総裁選での小泉氏の影響力は「派閥の領袖以上」(自民長老)となることは間違いない。

「嫉妬の海」といわれる政界では、「出る杭は打たれる」のがこれまでの歴史だ。しかし、小泉氏の「反安倍的言動」が目立っても、直属の上司で強面の二階俊博幹事長を始め、政府与党首脳らは黙認している。小泉氏の主張が正論で、党内若手議員の総意も踏まえた内容であることが理由とされるが、今後の党内権力闘争で小泉氏を敵に回すことへのおそれと不安が「特別扱い」の背景にあることは否定できない。不穏当な発言などで批判されがちな二階氏にとって、適宜、代理会見を引き受ける筆頭副幹事長の小泉氏は「格好の風よけ」(自民幹部)ともなっている。

「変人」でも「一匹狼」でもない優等生

父・小泉純一郎元首相は政界入り以来「一匹狼」に徹し、巨大派閥を率いて自民党を支配していた故田中角栄元首相を敵と見定めて「反田中」の党内闘争の先頭に立ち、署名集めなどに奔走した。故小渕恵三元首相、故梶山清六元幹事長と三つ巴で争った1998年7月の自民党総裁選を、田中元首相の長女・田中真紀子氏(元外相)が評した「凡人(小渕氏)、軍人(梶山氏)、変人(小泉氏)の争い」は政界史に残る名言だが、小泉元首相は「変人」を貫くことで長期政権を実現した。森喜朗首相(当時)の辞任に伴う2001年4月の総裁選で「自民党をぶっ壊す」と絶叫して圧勝し、首相として持論の郵政改革断行のため衆院を解散して反対派に刺客を送り込んだ政治手法は「まさに一匹狼の変人でなければできない芸当」(故加藤紘一元幹事長)だった。

しかし、息子の小泉氏は「変人ではなく、一匹狼でもない」(自民若手)ことは周囲も認める。父親は政治決断を求められると「直観は過(あやま)たない、過つのは判断だ」との口癖通り、政策論より政治的勘で突っ走ったが、小泉氏は「しっかり勉強し、同僚や上司と話し合った上で行動する」(同)ことを信条としている。聴衆から拍手喝さいを受ける演説も「事前の徹底した情報収集への努力」(自民選対)の賜物でもある。だからこそ、沈黙を強いられがちな1強政権下でも発言の自由を確保できるのだ。

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