地味に流行「トンチン年金」はおトクなのか 長生きすればするほど、おカネがもらえる

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ちなみに公的年金は、トンチン年金的な性格があることをご存じでしょうか。つまり、途中解約はできません。また死亡保障年金という意味では18歳未満の子供がいる場合や会社員の妻なら、遺族年金の形でそれなりに手厚い死亡保障がつきますが、1人の場合、死亡保障はありません。一方で、終身年金ですから長生きすればするほど得をします。つまり公的年金は「トンチン性」が高い「長生き保険」なのです。

さて、厚生労働省が発表している元会社員の老齢年金のモデルケース(65歳から受給)を見てみましょう。それによると、国民年金と厚生年金を合わせて約188万円です。もしこれを70歳から受給(5年繰り下げ)をすると、267万円もらえることになります。

改めて説明すると、ここでいう繰り下げとは、本来65歳から受給できる年金を、受給開始年齢を繰り下げることで年金額割り増しという特典を受けられる制度です。増額率は1月あたり0.7%、つまり5年繰り下げると42%の割り増しとなります。50歳以上の人なら、「ねんきん定期便」に老齢年金の概算が掲載されていますので、ぜひ確認しておきたい情報です。

繰り下げる場合、70歳までの生活資金が課題に

平成29年度における老齢基礎年金(国民年金)の満額は77万9300円です。これは20歳から60歳まで一度も未納がなかった方が受け取れる年金です。仮にずっと専業主婦だった人は、この金額をベースに繰り下げを行うこともできます。この場合、70歳まで繰り下げると約110万円の年金となります。もし共働きだった同い年の夫婦がそろって繰り下げをすると、2人分で合計約377万円の年金額を確保することが可能です。これが終身年金で確保できるというのは、精神的な大きな支えになるのではないでしょうか?

では、この夫婦で、夫が先立つことになったらどうでしょうか。この場合、夫の「繰り下げをする前の老齢厚生年金の75%」が妻の終身年金となります。この例だと、夫死亡後に妻が受け取る年金は、合計190万円程度となります。

もちろん、繰り下げを前提とすると70歳までの生活資金をどうするのか問題となります。退職金を取り崩す、働いて収入を得る、現役時代に貯蓄をして備える、など、複合的な対応が求められます。

ここまでお伝えしていくと、トンチン年金は確かに終身年金なので、人生100年時代には一見、とても魅力的に映ります。しかし、実際は「トンチン年金だけでは、老後の安心は手に入らない」との認識が必要です。できるだけ早くからiDeCoやNISA、あるいは保険といったほかの手段を使って複合的に備えていくこと、これが回答です。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

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やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

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