「従来型」のアドフラウドが一掃されないワケ 一掃は水虫の撲滅と同じくらい難しい

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フィナンシャル・タイムズFT)は9月、自社の動画広告在庫をプログラマティック取引で販売していないにもかかわらず、ft.comになりすました動画広告在庫が15のサプライサイドプラットフォーム(SSP)で販売されていることを突き止めた。同社によると、被害額は推定で月100万ポンド(約1.5億円)。そのためアドテク企業オース、スポットX、フリーホイール、ビッドスイッチの4社に対し、ft.comになりすました動画広告在庫を販売しないように要請した。

アドフラウド検出サービスを提供する企業ホワイト・オプスのCEO、マイケル・ティファニー氏は、ヘッダー入札の普及がドメインなりすまし増加につながっていると述べた。同社は、米国内で6000を超えるパブリッシャーになりすましていたとされる「メスボット」の手口を明らかにして以来、注目を集めている。

ヘッダー入札の普及以前は、パブリッシャーは広告在庫を販売する際に、一度につきひとつのSSPにコールをかけていた。複数のSSPが同時に入札するわけではなかったので、個別の広告在庫にアクセスしていた。このためバイヤーは、どのSSPがどのパブリッシャーと直接関わっているかを把握可能だったため、ドメインなりすましを監視することができた。

だがヘッダー入札により、複数のパブリッシャーが同時に複数のSSPにコールをかけることができるようになった。広告在庫の価格を上げるために、ヘッダー入札を利用するパブリッシャーはブラウザ上でさらに多くのSSPをロードするようになった。こうして、特定のSSPが特定の広告在庫にアクセスすることが少なくなり、バイヤーが健全性をチェックしにくくなった。

「ヘッダー入札には長所も多いが、しかし従来型のアドフラウドが再び横行するきっかけにもなっている。ドメインなりすましを行う悪徳業者にとって、つけ入る隙が増える」とティファニー氏は語った。

広告在庫タイプの偽装

アドベリフィケーション企業、ダブルベリファイによると、アドフラウドは、動画広告ではディスプレイ広告の2倍の頻度で発生しているという。大量の広告費が動画広告に投じられていることを考えると、これはありそうなことだ。

アメリカのデジタルパブリッシャー最大手100社の場合、ディスプレイ広告のCPM(広告表示1000回あたりの料金)が2~6ドル(約228~684円)であるのに対し、動画広告のCPMは12~20ドル(約1368~2280円)だと、あるバイヤーが匿名を条件に明かした。このように動画広告のCPMがディスプレイ広告を上回るため、悪徳業者がディスプレイ広告在庫を動画広告在庫に偽装し、差額分をだまし取る行為が横行している。

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