小泉進次郎が憂慮した東京五輪のおもてなし このままでは1500万食を国産食材で賄えない
バタリーケージとは連続した金網でできたケージ(かご)のこと。4段5段と天井までケージが積み重ねられ、1坪あたり126羽もの鶏を収容しているところもある。1つのケージは1羽あたり平均B5サイズ(257×182mm)ほどの面積しかなく、止まり木も1本のワラもない。
ここで卵を産ませられ続け、産まなくなったら廃鶏とよばれ、ゴミのように処分され、缶詰めの肉やペットフード、肥料などになる。ちなみに卵を産むのは当然メスだけなので、オスのヒヨコは不要品として生まれてすぐにゴミとして処分されたり、シュレッダーでつぶすなどして殺されている(採卵鶏は食肉に適さない)。
日本では繁殖用の母豚はストール飼いが一般的だ。母豚は体がぎりぎり入る大きさの妊娠ストールで飼育される。これだと管理や清掃が容易だからだ。豚は後ろを振り向いたり向きを変えることもできない。生まれた子豚は麻酔なしで牙を抜かれ、尻尾を切られ、オスは去勢される場合も多い。母豚は出産しなくなれば用済みとなり、お肉となる。
スポーツの祭典だけではないオリンピックの意味
オリンピックは「スポーツの祭典」であることは変わらないが、地球環境にやさしいオリンピックが目指され、「持続可能なオリンピック」を大きく打ち出したのは、2012年のロンドン大会からであった。
オリンピック・パラリンピックの環境への影響を考えれば、会期中の運営だけではなく、会場などの設営・建設、物品の調達などの基準が非常に重要だ。まさにオリンピックはこの美しい地球を次世代に残すための持続可能性を追求する知恵の祭典でもある。
2015年9月の国連サミットで採択され2030年までの国際目標とされているSDGs〔持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)〕の推進の観点でもオリンピックの経済発展と環境保全の調和は重要だ。近年、倫理的消費(エシカル消費)が主張されているが、これは環境に加え、人権などに重きを置く概念といえる。GAPはそうした考えを網羅するものだ。
東京大会開催時に提供される食事量は現在算定中だが、2012年のロンドン大会では選手村で約200万食、期間中に提供された食事は合計で約1500万食だった。選手村ではピーク時に30分で1万食を提供していた。
その食材の生産、流通、調理、廃棄のプロセスにおける環境への影響、それに携わる者の労働条件等の人権確保、食材にされる動物への配慮にも人類は目を向けるようになり、この配慮が取引の必須条件になってきている。
日本の経済政策は事業者の意向を重視した過度なコンセンサス方式が特徴だ。
事業者をおもんぱかるあまりに改革の機会を逃し、社会の趨勢に遅れれば、むしろ産業は衰退する。遅すぎる決断にならないために対策を進めるべきだろう。
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