渋滞時のタクシー料金「90秒で80円」は妥当か 需要喚起策は「ちょい乗り」割引だけじゃない

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利用者が減り続けているタクシーだが、その一因は「いくらかかるかわからない」乗車料金にあるのではないだろうか(写真:bee / PIXTA)

タクシーに乗ると、同じコースを走っていても、その時々で運賃が異なることがある。ある程度運賃を予想してタクシーに乗車したら、思った以上に高かったという経験をしたという人は多いだろう。

低速下で1分30秒ごとに+80円は妥当か?

その理由は、日本全国のタクシーのスタンダードとして、距離運賃とともに「時間距離併用運賃」を導入しているからだ(高速道路では適用なし)。

タクシーに乗ると、運賃の内訳として以下のような表示がある(東京都内の例)。

初乗運賃:1.052kmまで……410円
加算運賃:その後237mまでを増す毎に……80円
時間距離併用運賃:時速10km以下の走行時間について、1分30秒まで毎に……80円

 

この最後にある時間距離併用運賃によって、同じ距離を走っても所要時間が異なれば運賃も変わってくる。1分30秒(90秒)といえば、長めの信号待ちをしたり、ちょっとした渋滞にはまればすぐ経過してしまう。これが、走っていなくてもメーターがどんどん上がってしまうカラクリだ。

この制度はいったい、どのような経緯で導入されたのだろうか。そして、時速10km以下で時間ごとに運賃がかかる仕組みは、本当に妥当だろうか。

時間距離併用運賃制度ができたのは、昭和40年代の高度経済成長期のこと。当時、都市部では交通渋滞が蔓延しており、タクシーの収益ロスをカバーするため業界側が提唱し、1970(昭和45)年から導入された。

当時の国会審議の議事録を見ると、この運賃導入の目的は大きく2つ主張されていたことがわかる。タクシー運転手による乗車拒否を抑制することと、事故の低減である。

第1の乗車拒否についてだが、時間距離併用運賃だけだと、渋滞が起きれば運転手は割を食う。したがって、渋滞している場所へ行きたい客の乗車を拒否する運転手が出た。第2の事故も原因は同じで、運転手がなるべく早く目的地について利益を出そうとするので、信号での見切り発車などが相次ぎ事故が多発した。

次ページ時間距離併用運賃を正当化する「機会費用」とは?
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