小泉進次郎が憂慮した東京五輪のおもてなし このままでは1500万食を国産食材で賄えない
国際水準としての意味が強いグルーバルGAPを取得する必要が強調され、小泉氏もたびたびそうした発言をしている。それは、日本からの農産物輸出への後押しにつながるとの考えがあるからだ。グローバルGAPは、欧州などで農産物流通の事実上の前提条件となっている背景がある。
先の小泉氏は、国際的に通用しない国内GAPが普及しても、ガラパゴスGAPになるだけだと以前から指摘しており、海外展開を見据えた国際水準の認証を取得するよう訴えている。
だが、2016年時点で日本ではグローバルGAPは約400農家、JGAPは4000程度の農家しか取得しておらず、合わせても全体の1%未満だ(出所:2017/03/25付東京新聞)。GAPの普及が進まない背景には、認証の取得や維持などにかかるコストの高さもあげられる。グローバルGAPでは取得に数十万円、維持に年間20万~40万円かかる。そもそも販売先が国内だけなら未取得でも取引に支障はなく、メリットを国内の農家が感じにくいのが現実のようだ。
今年10月の衆議院議員総選挙では自民党福島県連が県版選挙公約でGAP取得の推進を入れており、選挙におけるアピール材料にまでなってきている。
アニマルウェルフェアの要件がカギに
次に畜産物におけるGAPへの対応をみていこう。食の観点から見ると日本の課題は畜産であることは明白だ。組織委員会が定めた畜産物の調達基準を見てみると、食品安全、労働安全、環境保全、アニマルウェルフェアの4つの要件を満たすものであることが明示されている。11月15日には農林水産省がアニマルウェルフェアに配慮した飼養管理を広く普及させるべく、地方農政局などに周知を依頼する通達を出している。
日本の畜産において、安全や衛生に関しては、細かな法令上の規制措置が講じられている。また、環境保全については家畜排せつ物法や廃棄物処理法、水質汚濁防止法などの規制が、労働安全に関しては労働安全衛生法などが適用される。そのため、これらの3項目については、現行法令の順守をベースに対応可能だ。問題は4つ目のアニマルウェルフェアだ。
アニマルウェルフェア(animal welfare)は動物福祉、あるいは家畜福祉と訳されることも多い。人間が動物に対して与える痛みやストレスといった苦痛を最小限に抑えるなどの活動により動物の生き物としての尊厳に配慮することを実現する考えだ。
犬や猫などのペットについては最近、関心の高まりがみられ、殺処分への批判も多い。家畜は産業動物、あるいは経済動物といわれる。家でペットを大事にする人も、食卓に並ぶ食肉が生きていたときに人間にどういう扱いを受けてきたかについては関心が薄いのが普通だろう。消費者が安い食肉を求めるあまり、畜産でも効率化が進み、工場型畜産が当たり前だ。
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