子どもの英語教師はネイティブでなくていい 英語を自然に身に付けるのに必要なこと

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

以前、「子どもには普段から英語で話しかけてます」とお話しされるお母さんと、お子さん(2歳女子)に出会ったことがあります。そのお嬢さんは日本語がきちんとできないころから母親には英語で話しかけられていたのです。留学経験のあるお母さんが彼女に話す英語は命令や指示が多く、子どもに発語や笑顔が見られなかったのが印象的でした。彼女はお母さんに話しかけられて戸惑っていたのかもしれません。

お茶の水女子大学の内田伸子教授(発達心理学・認知心理学)も、『ことばの学び、英語の学び』で、「母語の土台がしっかりしていれば、第二言語の習得が容易」になると指摘しています。

日本語能力は外国語取得に役立つ

たとえば、3歳から13歳まで親の転勤でカナダに移住した子どもがいました。彼女は家では日本語、学校では英語の生活を送っている内に、発音はネイティブスピーカー並みになったけれども、小学校高学年になると学力が落ちてしまったそうです。発音はできても、読み書きを伴った学習言語としての英語の読解力に問題があったからです。

一方、ある調査によると、ネイティブスピーカー並みの読解力を身に付けるのが最も早かったのは、7歳から9歳まで日本にいてカナダに行った子で、次が小学校まで日本語で学習を受けた10~12歳だったそうです。つまり、外国語を身に付けるには、言葉を相対化する必要があり、まずは自分の母語をしっかりと身に付けることが不可欠だということがわかります。

どの言語にも共通する「メタ言語能力」があると、外国語の習得も容易になります。母語である日本語を話せるだけでなく、日本語について知っていると、英語を学ぶ際に役に立つのです。どんな言語でもネイティブは「母語はわかっている」と思いがちですが、ネイティブほど母語については知らないものです。

文部科学省は現状把握として、「小学校低学年における学力差は、その後の学力差に大きく影響すると言われる中で、語彙の量と質の違いが学力差に大きく影響しているとの指摘もあり、言語能力の育成は課題となっている」と、日本語能力向上の必要性を認めています。日本語の土台をおろそかにしたまま、英語を学ぶことは本末転倒になりかねない、ということです。

木原 竜平 ラボ教育センター 教育事業局長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

きはら りゅうへい / Ryuhei Kihara

1987年、筑波大学卒業、ラボ教育センター入社。東京、名古屋、大阪にて営業、指導者研修を担当。2002年より東京本社にて、外国語習得、言語発達、異文化理解教育について専門家を交えての研究に携わる。日本発達心理学会会員。日本子育て学会会員。ラボ・パーティは1966年「ことばがこどもの未来をつくる」をスローガンに発足し、2016年に50周年を迎えた子ども英語教育のパイオニア的存在。
 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事