「タダ同然の廃墟物件」に買い手が集まる理由 空き家流通に訪れている変化の風

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しかし、政令指定都市クラスの自治体でなければ、こうした情報のデータベース化が遅れているほか、自治体ごとに部署名がバラバラだったり、必要な書類がそれぞれ違う場所にあったりする。そのため、情報を集めること自体にノウハウと時間がかかる。これが一元化され、素人でも簡単に調べることができるようになれば、買って安心かどうかがある程度予測できるようになり、流通は促進されるはずだ。

もう1つは、仲介手数料の見直しだ。現在、仲介手数料は、売買の場合、売買価格に応じて宅地建物取引業法で上限が決められており、売買価格が50万円だとしたら、仲介手数料は売買価格の5%が上限で、税込みで2万7000円。この金額で前述した各種調査を全部行うとしたら、とてもではないが割に合わない。つまり、不動産会社にとって取り扱うメリットがないのである。

国交省にも手数料を見直す動き

石川県にある街並みが美しい海辺の物件も人気を集めた。現状では活用方法は未定だが、買い主は土地、建物のポテンシャルを生かしていきたいと意欲満々だ(写真:家いちば提供)

しかも、仲介手数料は成功報酬のため、売買が成立しなければ、何度現地に行こうが、いくら相談に乗ろうが一銭ももらえない。近隣の物件だけを扱い、どう売るかを考えなくても不動産が売れていた時代であれば、それでもよかったかもしれない。しかし、売りにくいものを工夫して売る時代には、売るための工夫などに関するコンサルティングに対してもなんらかの報酬を支払ってもいいのではないだろうか。

石川県の物件の内部。きれいに保存されている(写真:家いちば提供)

こうした中、国土交通省も空き家流通を図るため、400万円以下の物件については、仲介手数料の上限を実費なども含めて18万(プラス消費税)にするという動きがあり、現在、パブリックコメントを募集している。早ければ12月中に公布、2018年1月から施行という計画というが、さて、それで空き家が動くようになるかどうか。

藤木氏の場合、仲介手数料は宅地建物業法で定められた手数料の半額としているが、物件所有者に必要な書類を取得してもらうなど、あの手この手で出費を抑え、大幅な収益にはならないが、赤字にもなっていない状況という。そのほか、入札方式とする場合の手数料を別途設けるなどの工夫もしている。

空き家関連のビジネスが乱立する中、家いちばに追随する動きがないのは仲介手数料を鑑みると割に合わないと考える人が多い結果だろうが、モノはやりよう、考えようなのである。

あちこちのセミナーで「空き家が増えているのなら安く買えないだろうか」と期待している人たちに会う。生活費の中で最も割合の大きい住居費が空き家利用で低く抑えられれば、暮らしも人生も変わる。空き家利用ならビジネスも始めやすい。そう考えると空き家の増加は、社会にとってはピンチだが、個人にとってはチャンスともいえる。そして、そのチャンスが積み重なっていくことがいずれ社会のピンチを救うことになるかもしれない。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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