ファナックが工作機械活況をモノにした理由 フル生産に沸く業界各社、リスクは部品不足

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しかし、工作機械業界に死角がないわけではない。それは、部品の調達難に伴う納期の長期化だ。

工作機械で使う主要部品の1つに、製造工程での精密な「位置決め」に欠かせないリニアガイド(直動案内機器)がある。ベアリングを使う製品だ。主なメーカーは世界シェア5割を超えるTHKと日本トムソンで、製造する企業は限られる。

重要部品の調達難が大きなリスクに

リニアガイド(直動案内機器)の部品群。半導体製造装置や工作機械で使うリニアガイドが世界的に不足している (撮影:今井康一)

そのうえ、この部品は生産が急増する半導体製造装置にも数多く使われているため、世界的な品薄状態が続いている。部品メーカー関係者によれば「納期が来年の夏という条件でもリニアガイドの注文が入る」という。工作機械メーカー各社は、部品の確保と納期対応に追われているのが現状だ。「何とか納品遅れを発生させていない」というが、部品の調達難は大きなリスクとして横たわる。

とはいえ、今後の見通しは決して悪くない。中国向けや半導体製造装置向けも、当初は年内くらいまでで失速するのではないかとみられていたが、「毎年6月がピークで、冬に向かって需要が落ちて、春節後に息を吹き返すのがパターンだったが、今年はそのパターンが当てはまらない。日本のメーカーを含めて繁忙な状況」(稲葉会長)というように、勢いが止まる気配はないという。

「機械を作る機械」である工作機械の受注動向は、企業の設備投資の状況を見る、先行指標といわれる。業界の好調さは、本格的な好景気の波が訪れることを予言しているともいえるだろう。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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